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イノベーション
2017.05.19

IoT時代のAmazon AWSが業務効率を改善する理由
イノベーションを源泉に成長し続ける企業が見据えるものとは

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2017年5月10日から12日までの3日間、東京国際展示場において、「Japan IT Week 春」が開催された。初日に開催された基調講演「Cloud is the New Normal ~クラウドが加速するエンタープライズトランスフォーメーション~」では、アマゾンウェブサービスジャパン株式会社代表取締役社長の長崎忠雄氏が同社の変革を加速するクラウド化の動向について、実例を交えながら分かりやすく解説した。

長崎氏は港湾関係メーカやデルなどを経て、2006年にF5ネットワークスジャパン株式会社の代表取締役社長兼米国本社副社長に就任し、その手腕を遺憾なく発揮してきた。2011年には現在のアマゾンウェブサービスジャパン株式会社の代表取締役社長に就任。企業におけるクラウド活用の普及に尽力されている。IT業界のグローバルリーダーとして業界を牽引している存在である。

アマゾンウェブサービスジャパン株式会社代表取締役社長長崎忠雄氏

 

イノベーションが成長の源泉

世の中には数多くのIT企業が存在するが、Amazonが他社と一線を画すところは、「“地球上で、もっともお客様を大切にする企業であること”を企業理念に掲げている点だ」と長崎氏。Amazonは1996年、Jeffrey Preston Bezos氏が立ち上げた企業であり、すでにマーケットが確立され、ヒエラルキーが出来上がっていた出版業において「本をインターネットで売る」という、当時は誰も手を出していない(出そうとも思っていなかった)分野に切り込んでいく新たなビジネスだった。それが急成長を遂げAmazonでは今や、本だけに留まらず、日用品をはじめ、家電製品、音楽や映画なども購入することができる。

「ただのショッピングをするだけではなくて、デジタライゼーション。新しいお客様に対する価値体験というものを、お客様があっと驚くかたちで出していくというのがAmazonという会社の生業になります。」と長崎氏。

ではなぜ、Amazonは顧客を驚かせるサービスでビジネスを成立させることができるのか?

それは顧客である企業のニーズを徹底的に調査して、今後5年、10年のスパンで何を求めているのかを、常に先を読みながら先回りしてサービスを提供しているからだ。その結果が今のAmazonを形づくっている。Amazonにとって、イノベーションが成長の源泉というのだ。

ネットの成長とほぼ同時に育ってきたAmazon

インターネットが世の中で発展してきた過程で、Amazonも一緒に成長してきた。サービスも毎日のように生み出されてきたが、すべてが成功した訳ではなく、その中には失敗もあったという。

たとえば成功した例を挙げると、「Amazon Prime」に含まれる「お急ぎ便」の即日デリバリーがある。対象エリアに限るが「お急ぎ便」なら、注文当日に届くというものだ。最近では「Amazon Prime Now」という対象エリアでの買い物が1時間以内に届くサービスも登場。

長崎氏によると、Amazon Primeというサービスが企画された当時、「即日で届けるサービス、誰も必要としないのでは?」との議論が社内で持ち上がったという。しかし、「商品が1週間経って届くよりも、注文してすぐに届くほうが顧客の価値体験として喜んでもらえるのではないか」いう仮説のもとに、成功するかどうかもわからないサービスをビジネスとして展開し始めたのだそうだ。

そして今ではAmazon PrimeやAmazon Prime Nowは、Amazonを語るうえで非常に重要なサービスとなっている。

WebショッピングにIoTを取り込んだダッシュボタン

ここ最近の成功例では、「Amazon Dash Button」ことダッシュボタンがある。これはIoTのボタンであり、このボタンを押すことで、お気に入りの商品をWi‐Fi経由で注文できるものだ。洗剤やおむつ、ミルクといった日常品がすぐに注文できる。注文できる商品は固定されるが今までのようにスマートフォンやパソコンで、インターネットのサイトにログインして注文する手間が必要ない。

また、iPhoneのSiriのような「Amazon Echo」は米国で人気を博している。Siri同様人工知能を用いた音声認識のアシスタントで、今日のニュースやスケジュール、渋滞情報をすべて音声で答えてくれる。音楽を聴いたり、芸能人の出身地や年齢を聞いたり、ファミリーアシスタントデバイスというかたちで、米国の家庭に物凄い勢いで普及しつつある。

新感覚のコンビニ

Amazonは現在、「Amazon Go」という新しいコンビニエンスストアを実験している。これは欲しい商品を取って自分のバッグに入れ、そのままお店を出ると、スマートフォン上で会計されるというもの。人がいらない、レジのないコンビニだ。

動体認識、ビッグデータの蓄積、ディープラーニングなど、さまざまなテクノロジーが支えている。実際にシアトルにテスト店舗を出して実験中だが、ここでうまく行けば全米で展開し、そのあとに世界で展開していくという。テクノロジーがなくては実現できない新しいかたちの店舗スタイルだ。

 

ITの民主化を実現したAWS

なぜ、AmazonはAWSを作ったのだろうか?

長崎氏によると、「AWSクラウド」は作りたくて作ったわけではないという。企業がセレクションを増やす、あるいは世界進出するビジネスのスピードにITが追い付かない事例が2000年代前半にあった。ビジネスサイドは早くサービスを立ち上げたいが、テクノロジーが追い付かないのだ。

そこでAmazon社内のデベロッパーやエンジニアに毎日使っている時間を調査したところ、インフラストラクチャーのメンテナンス。いわゆる保守、あるいはバグフィックスに8割以上の時間が使われていることがわかったという。

そこでワンクリックでWebサイトが立ち上がる、サーバーを調達できる、あるいはデータベースを調達できる仕組みができないかという問いかけから始まったのが、今日のAWSになった。Amazonが成長する過程で、ビジネス上の課題を解決するために生まれたものがクラウドのテクノロジーというわけだ。

AWSは2006年にリリースして以来、2017年の時点で数百万の顧客に利用されている。日本においては、数万以上のアクティブな顧客がいるという。Amazonは世界に16の「リージョン」と言われるデータセンターとクラスターを持っている。まったく同じ品質のデータセンターのかたまりを、日本のみならず、アジア、ヨーロッパ、アメリカ、カナダ、南米などのあらゆる拠点に用意しているのだ。

海外進出を考えている日本企業、とくに早くサービスインをしたい企業は、これらのリージョンを利用することで、世界展開が容易になる。

「クラウドのひとつの特徴は大きな資本を持っていなくても、大きな会社と同等のテクノロジーを瞬時に手に入れられることです。ITの民主化というものがクラウドによってできたと思っています。」(長崎氏談)

AWSもAmazonが成長する過程で生まれた、ひとつのイノベーションの結果なのだ。

「もし、お客様がクラウド導入にあたって何かガバナンスだとか、認定でハードルになるケースがあれば、我々にお声掛けいただければ、喜んで払拭させていただきます。」と、長崎氏。AWSにはセキュリティの専任チームがあり、顧客の基準を満たすべく弛まぬ努力をしているという。

またAWSの導入は、顧客のセキュリティを見直すきっかけにもなる。クラウドに移行することで、社内のセキュリティ基準というものが明確化できたという企業もある。具体的には、どのデータを社内で持って、どのデータを外部に置けばよいのかが把握できたという。オンプレミスよりもセキュリティレベルを向上できたわけだ。

クラウドをどう利用するかのステージへ

長崎氏によれば、現在はクラウドへ移行すべきかどうかではなく、クラウドをどう活用するかのステージへ来ているとのこと。

先行きが不透明な昨今。国際的な競争力が非常に激しくなってきている。その中で小さな実験を繰り返しながら、新しいイノベーションを起こさなければならない。その一助となるのがAWSのようなクラウドであり、新サービスを世界で展開する架け橋にもなる。またコスト削減やセキュリティを見直すきっかけにもなり、業務の効率化にも繋がるだろう。AWSをまだ導入していない企業は、導入によって新しい道が開けるかもしれない。
 

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