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イノベーション
2017.02.24

世界と同じ土俵に立てない? 1年遅れの日本のAI開発
パワーゲームと化したAI開発で日本の勝機はどこにあるのか

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アマゾンから発売(日本未発売)されている家庭用スピーカー「Amazon Echo(アマゾンエコー)」が英語圏で大ヒット中だ。アマゾンエコーは、音楽を再生するでだけでなく、音声認識機能を持ったAI(人工知能)「Alexa(アレクサ)」によって、音声でさまざまな操作が可能になっている。たとえば、「アレクサ、今日の天気を教えて」とたずねれば天気予報を音声で教えてくれる。さらに、現在は人の声でテレビをつけることや、ピザの注文までできる。

業界関係者からは、アマゾンエコーの登場はスマホ時代に終止符を打つ可能性があるほどの革新的な製品との見方も多く、米国の各IT企業がこの市場のプラットフォームになるべく熾烈な技術競争をはじめている。グーグルはアマゾンに対抗して、音声認識機能を持つ家庭用スピーカー「Googleホーム」を2016年11月に発売。さらに、マイクロソフトも同様の家庭用デバイスを開発中であることを公表している。

このように米国ではAI技術の実用化が進んでいるが、日本では社会に影響を与えるほどの音声認識デバイスはいまだ登場していない。

人工知能研究の第一人者であり、東京大学特任教授の中島秀之氏(以下、中島氏)はその理由として、「日本のAI開発は米国と比べると1年遅れている」と指摘する。

2010年から2014年の間に各国が出願したAI関連特許数をみても、米国15317件、中国8410件、日本2071件というように、日本は断トツで少ない。なぜ、日本はこれほどまでにAI開発で遅れをとっているのだろうか。

現在のAI開発はパワーゲーム

「1番の理由はAIを学習させるデータをもっていないことです。現在のAIはディープラーニングと呼ばれる機械学習技術の進化によって、画像や音声の認識率が格段に上がりました。ただ、学習には大量のデータが必要不可欠。日本企業は膨大なデータを収集できるビジネスモデルがなく、学習データがありません」(中島氏)

米国では、GAFA(グーグル、アップル、フェイスブック、アマゾン)と呼ばれる4大IT企業が、世界中のユーザーがスマホやパソコンなどのインターネット上で入力するテキストデータや、音声や映像などの膨大なバーチャルデータを収集し、画像認識や音声認識などのAI開発に役立てている。

中国では国主導で大量のデータを確保している。たとえば、中国の国家公務員に採用されるためには標準的な中国語を話せることが必須のため、年間100万人以上がスピーキング試験を受験している。中国政府はその音声データを収集できるのだ。

「日本には大量にデータが集められるような仕組みがほとんどありません。それどころか、個人情報保護の観点から企業が持っているデータの利活用が厳しく制限されています」(中島氏)

実際にJR東日本がICカード乗車券「Suica」の乗降履歴を日立製作所に販売したところ、個人情報保護法に違反する可能性があるとユーザーからの指摘があり、販売中止にまで追い込まれた。個人情報が漏れているわけではなかったが、ユーザーから許諾が取れていないデータを使用することはできなかったという。

そのほかにも大量のデータをディープラーニングで学習させるには大規模なサーバ設備や、高性能の計算機、大量の人材が必要になる。そのため、資金力に余裕があるグーグルなどの米国企業がどうしても強い。

日本語の音声認識AIならば勝機はある

このように現状のAI開発事業は、大量のデータと資金力(大規模なサーバや計算機)を所持している企業や国が優位なパワーゲームと化している。日本がアメリカや中国と同じ土俵で勝負するのは無謀といっても過言ではない。

しかし、総務省は「日本の研究機関や民間企業には、日本語の自然言語処理技術、日本語の文献や類義語辞典などを大量に保有しているため、日本語に関しては海外企業にはない強みを持っているのではないか」と語る。

さらに総務省は「国立研究開発法人『情報通信研究機構(NICT)』が開発した世界最高峰の音声認識、日本語の自然言語処理技術を技術移転し、NTTドコモやトヨタ自動車などの民間企業にも活用してもらうことで、高性能な日本語音声認識機能を持つAI開発を促していく方針」だという。とはいえ、悠長に開発している時間もあまりない。

「アマゾンエコーなどの海外製品が日本のプラットフォームになれば、膨大な日本語のデータが海外企業に収集されることになります。そうなると日本製品は土俵にも上がれなくなる」(前出・中島氏)

日本語に対応したアマゾンエコーやグーグルホームが2017年中には発売されるのでは、と噂されている今、早急に国内企業から高性能な家庭用の音声認識デバイスの登場に期待したい。
 

JBPRESS

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