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イノベーション
2016.12.13

自動車がタダになる?IT企業が一変させる自動車業界
自動運転がもたらす費用の低廉化とセキュリティの重要性

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「IoT×自動車」が普及すると自動車がサイバー攻撃のターゲットに?(写真はイメージ)

 まずは今後の自動車の動向の主軸となるIoT(Internet of Things)の歴史について振り返ろう。

 IoTは一般的に「すべての『モノ』がインターネットに繋がること」と説明されることが多いが、これを内容にこだわらず、「ネットワークに接続されたモノから情報を収集して、その情報から新たな価値を生み出すこと」と広くとらえた場合、IoTの構想はインターネットの登場当初から存在したといえる。

自動車はIoTの先駆者だった

 1990年代、日本にインターネットが普及しはじめた頃からずっと、将来は全てのモノがインターネットに繋がり、やがては自動車のワイパーの稼働状況を集めて、どこに雨が降っているか知ることができるようになる、といわれていた。

 以来、その構想の核となる部分は、ユビキタス、ビッグデータ、IoTと、言葉を変えてとらえなおされ、新しく生まれた技術を取りこみながら成長して、新しいサービスの模索につながってきた。

 自動車に関しては、この間にテレマティクス、ITS(Intelligent Transport Systems)、コネクテッドカーなど、新たなカテゴリが設けられ、サービスの実現、ビジネスモデルの成立に向けて、多くの取り組みがなされてきた。 

これからの「IoT×自動車」

 これまでの模索と、来たるべきIoT時代の自動車向けサービスでは、何が異なり、どのような展開が予期されるのだろうか。

 主な相違点としては、「広告型ビジネスモデルを成立させたIT大手の参入」、そして「所有から利用へ、有人から無人へ」、すなわちシェアリングサービスの普及と自動運転による無人化の2点が挙げられる(これらについては後述)。

 一方で、自動車のハッキングは、ホームページなどに対するハッキングに比べて、深刻な影響を社会に与えかねない。情報セキュリティの確保は、常に技術革新とのいたちごっこだが、効率的に問題を発見・修正していくことの重要性はいっそう高まるだろう。 

IT大手がネット上の広告モデルを自動車にも拡大

 1990年代後半から、自動車メーカー各社は、自動車を端末としてネットワークに常時接続するサービス、「テレマティクスサービス」に取り組んできた。走行データをもとにした渋滞情報の作成、レストラン検索などがその提供価値の中心だった。

 これらのサービスコストは収集情報の価値を上回っており、サービスはユーザーから徴収する利用料で成立していた(車両本体価格に含めることで、一見無料と受け取られる形をとったメーカーもある)。

 たとえば当時、アメリカの大手メーカー、ゼネラルモーターズ(GM)が提供していたオペレーターサービス「OnStar」では、ユーザー向け広告や、飲食店からのキックバックを費用にあてて、利用料の無料化を図ったが、月額30ドルの利用料を賄うには至らず、結局は断念せざるを得なかった。

 一方、自動車を端末としないインターネット上では、GoogleをはじめとするIT大手の牽引を力に、多くのサービスが、現在では広告収入を得ることに成功している。近年、これらIT大手が、満を持して自動車向けサービスへの参入に乗り出した。2015年にはスマートフォンと連動するカーナビとして、Appleが「CarPlay」を提供、Googleが「Android Auto」の提供を開始している。

 自動車メーカーはユーザーが自動車を利用している時間のみ接点を持てるが、IT大手は、PCの利用時間、スマートフォンの携帯時間もユーザーと接点を持っており、一日中情報を収集することが可能だ。

 これら企業の狙いは、自動車やドライバーに関する詳細情報の入手、ひいてはそれを活用したいっそう効果的な広告による広告・手数料収入の拡大であると言われている。たとえば渋滞中に、ドライバーがかつて検索したままになっていた近くのカフェへの立ち寄りを提案して、カフェから広告・手数料を得る、といったことも考えられる。

 IT大手は今後、このようにネット上で確立した広告モデルを自動車向けに拡大することで、収益を上げていくだろう。 

シェアリングサービスの普及と自動運転による無人化

 近年、日本の都市部では、駐車場の確保など自動車の維持コストがかさむこと、他の交通網が発達していることなどからカーシェアの利用が拡大している。一方で、海外では自家用車で他人を輸送して利益を上げたいドライバーと、これを利用したいユーザーを取り持つ、いわゆるライドシェアサービスも普及しつつある。

 アメリカのライドシェア大手「Uber」は自動運転車両の開発に取り組んでおり、将来的にはロボットタクシー(無人タクシー)の提供を目指している。

 このように、所有から利用へ、有人から無人へと自動車のあり方が変化することで、時間にしてわずか5%にとどまっている自動車の稼働率が上がり、約8倍になるとも試算されている。

 かつて自動車メーカーが利用料をユーザーに転嫁しなければ成立させられなかったサービスを、いまやIT大手は無料で実現しようとしている。さらに情報価値、ひいては広告価値を高められたなら、車両の稼働率の向上とあいまって、シェアリングサービスにおけるユーザー負担費用の低廉化を進めることができるだろう。将来的にはシェリングサービス利用料の無料化も見えてくる可能性がある。 

高まるセキュリティへの懸念と求められる対策

 IoT×自動車では、自動車そのものが端末として無線ネットワークに常時接続されるため、そこからハッキングなど不正アクセスが行われる可能性がある。

 自動車大手、フィアット・クライスラー・オートモービルズ(FCA)は、2015年にジープなどの車種で140万台のリコールを行った。これは、無線を介して車体にアクセス、遠隔操作できるという問題が発見されたためで、実際に15キロメートル以上離れたところからエンジンやワイパーを制御できることが確認された。

 幸いにもこの場合は、発見したのがセキュリティの専門家であったため、セキュリティホールの公表前にFCAに連絡が入り、対策が促された。

 これが悪用されていたなら、どのような結果が生じていただろうか。

 たとえば日本でも、海外からの大規模なサイバーアタックにより、企業のホームページが書き換えられたり、個人情報が抜き取られるなどの事案が発生している。もしも自動車へのハッキングが組織的に行われたとしたら、一斉に事故が発生して、交通網は混乱するだろう。さらに、自動運転車が狙われた場合、同時多発テロにも利用されかねない。

 アメリカの自動車メーカー、テスラモータースでは、セキュリティホールを潰すために2015年からバグの発見・報告に懸賞金をかけており、FCAも同様の取り組みを開始している。今後、この動きは自動車メーカー各社に広がっていくだろう。

JBPRESS

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