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スマートハウス
2016.09.29

北米の家電量販店ではスマートホーム製品が一等地に
家電量販店も、デパートも、通信事業者もIoTへ

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北米デパート シアーズのスマートホームのコーナー。

 前回(「北米のスマートホームはIoTをどう使っているのか」 http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/47657)は、北米の事例を中心にスマートホームが人々の暮らしをどう変えてきているのかをお話ししました。

 では、こういったスマートホームのプロダクトやサービスはどこで手に入るのでしょうか。今回は、北米のスマートホーム製品のマーケットや事業者の戦略を紹介していきます。

スマートホーム製品の店舗戦略

 北米最大の家電量販店ベスト・バイ(BestBuy)は、北米各地に店舗を構えています。ベスト・バイに入ると多くの店舗で入り口正面の一番目立つスペースに、スマホの販売スペースと並び「コネクテッドホーム(Connected Home)」のコーナーが目につきます。

ベスト・バイのコネクテッドホームのコーナー。

 そこでは家庭用Wi-Fiルーターから始まり、ウエアラブル端末、上述したような様々なスマートホーム商材が陳列され、多くの売り場面積を専有しています。韓国のサムスン電子が2014年に約200万ドルで買収した米スマートシングス(SmartThings)のコーナーなども徐々に存在感を高めています。

 このようなコネクテッドホームのプロダクトは、Bluetoothを使ってスマホ経由でインターネットと繋がることを前提としたもの、Wi-Fiを使って直接インターネットと繋がるもの、ゲートウェイやハブと呼ばれる専用のルーターのようなものを介してインターネットと繋がるものに大別されます。スマートシングスは、元々、専用ゲートウェイを中心に置き、様々なセンサーや機器がインターネットに繋がる商品を作っていました。

 サムスンがスマートシングスを買収したことにより、元々スマホのOSとして開発されたTizenと合わせてサムスンの様々な家電にも搭載され、サムスンの家電がスマートホームのゲートウェイ機能を搭載する時代になってきています。つまり、サムスンのテレビを買えば、テレビがハブとなって各種センサーやスマート家電、ウエアラブル機器などが繋がるようになっています。

 ホームセンター大手の1位のホーム・デポ(The HomeDepot)や同2位のロウズ(Lowe’s)も、それぞれ独自のゲートウェイとともにスマートホームのブランドを開発し、各店舗で販売しています。ホーム・デポは、「Wink」というブランドで、メーカーを問わず100を超えるスマートホーム機器を繋がるような仕組みを提供しています。

ロウズの「Iris」ブランド専用ブース。

 ロウズは「Iris」というブランドで、量販店の中ではいち早く独自のプロダクトを確立した会社ですが、どこの店舗でも最前列に専用のブースを構えており、昨年までで数十万台の出荷実績があります。

 基本は売り切りですが、月額10ドルで付加価値機能の提供をし、さらには大手ホームセキュリティ会社との提携で、本格的に管制センターからの常時監視サービスの提供を始めています。

 有名デパートのシアーズ(Sears)でも、スマートホームのコーナーを設置しているところも出てきています。シアーズでは、さまざまな商品に精通する販売員が来客者に活用方法をアドバイスするだけでなく、設置のサービスなどを提供しています。

 サンフランシスコでは、量販大手のターゲット(Target)がコネクテッドホーム商品に特化したショップ「オープンハウス」を展開し、各商品に専用のディスプレイ付きで利用事例や他の商品との連携例を動画で紹介しています。さらに、寝室や赤ちゃんの見守りなどのシーンをイメージした区画を店内に設け、タブレット操作の組み合わせで生活シーンでの活用例が具体的に理解してもらえるよう工夫を凝らした展示をすることで、アーリーアダプター層以外の取り込みを試みています。

ターゲット(Target)が展開する、コネクテッドホーム商品に特化したショップ「オープンハウス」。

 シリコンバレーのパロアルトでは、ネスト(Nest)の創業メンバーの一人が「b8ta」(ベータ)というショップを2015年末にオープンしました。b8taでは、実際に機器の購入もできますが、ビジネスモデルとしては機器販売からの収益を目的とはしていません。クラウドファンディングなどで次々と誕生するコネクテッドホーム機器メーカーに展示・販売スペースを提供し、訪れる顧客の反応を収集してフィードバックすることから収益を得るという新たな試みも行っています。

 とはいえ、まだまだ、多くの人々が自ら商品を選び、自分で設置、設定して利用するには敷居が高いこともあって、こういった量販店での普及はアーリーアダプターが盛り上げている状況です。こういった背景もあり、ロウズなどでは有料で設置、設定を代行するサービスの提供も始めています。

ネットワークサービス事業者の参入

 一方、こういった設置や設定をサービスとして提供でき、さらにコールセンターや訪問サポートなどができる体制をもともと持っているサービス事業者が、サービスとしてのスマートホームの提供を数年間から展開しており、市場を作り始めています。

AT&Tの「Digital Life」ブランドの製品。

 通信事業者大手のAT&Tも「Digital Life」というブランドで、スマホなどを売る各量販店でスマートホーム型のセキュリティサービスの展示スペースを設けており、月額利用のサービスとして提供し、数十万人の加入者を獲得しています。

 コムキャスト(Comcast)、タイムワーナー・ケーブル(Time Warner Cable)、コックス・コミュニケーションズ(Cox Communications)、ロジャース(Rogers)といったケーブルテレビ大手事業者も、テレビ、インターネット、電話に次ぐ4番目のサービスとして、スマートホーム型のセキュリティサービスの提供を数年前から展開しており、新たな収益源としています。

 こういった事業者の中には、当初は、人々がサービスへの理解が進まないことや、色々な技術的な課題でサービスが不安定だったこともあり、なかなか加入者が伸び悩んでいたところも多く、数年前に既に撤退してしまったサービス事業者もいくつかあります。ですが、ここ1~2年ほどで認知度が高まり、加入者の獲得が伸び始め、一つの事業として成り立ち始めています。

コムキャスト(Comcast)の「Xfinity Home」ブランドの展示。

 当然、もともとホームセキュリティを提供するADT、Protection 1、Vivintといったホームセキュリティ事業者もスマートホーム型のサービスを始めており、通信事業者としのぎを削っています。北米には1万近いホームセキュリティ事業者が存在すると言われていますが、大半のホームセキュリティ事業者も既にスマートホーム型のサービスを提供しており、新たな加入者を獲得しています。

 さらに、こういったホームセキュリティ事業者に対してスマートホームプラットフォームをクラウドサービス基盤として提供するAlarm.comも、NASDAQに上場を果たし、株価も堅調に伸びています。ホームセキュリティの業界では、あと3~4年で、従来型のホームセキュリティが、すべてスマートホーム連動のサービスに置き換わると言われています。

タイムワーナー・ケーブル(Time Warner Cable)の「IntelligentHome」の展示。

 少し変わったアプローチとしては、通信事業者の大手ベライゾン・コミュニケーションズ(Verizon Communications)が、自社の光テレビサービスやブロードバンド加入者に限定して、月額10ドルで、自社製品に限らず量販店などで市販されているコネクテッドホーム製品のお助けサポートを始めています。

 このベライゾンは、過去にこの手の事業から撤退した事業者の1社ですが、ブロードバンドサービスを提供する光ファイバーのモデムには、既にコネクテッドホームのゲートウェイ機能が搭載された状態で数百万を超える加入者宅に配布されているようで、虎視眈々と再参入をもくろんでいます。

 アップルもHomeKitで、いよいよiOS10から積極的にこの事業に本格参入してくるようですが、この辺の設置・設定のところが課題になると言われていますので、こういったサービスのニーズは今後高まっていくかも知れません。

ビジネスモデルのパラダイムシフト

 一昔前は、通信事業者、ケーブルテレビ事業者、ホームセキュリティ事業者が競合するということは考えられなかったわけですが、こういったサービスの登場により競合する世の中になってきています。結果として、加入者を食い合っているケースもありますが、もともと20%くらいで横ばいだったホームセキュリティの普及率が、このサービスの登場により20%を超えた成長を見せ始めており、ホームセキュリティに未加入・無関心だった層を取り込み始めています。

 一方で、この手のサービスが今後も成長していくだろうと予測されていることに、疑問を投げかける人々も少なくありません。

 しかし、遡ればケーブルテレビなどでのテレビ視聴が当たり前となっている米国でも、ケーブルテレビの技術が登場し、多チャンネルが視聴できる時代が訪れた当時、多くの人は「月額の料金を払ってまで多くのチャンネルを見る必要はない」と言っていたようです。

 携帯電話にしても同じで、登場した当時は外にいてまで電話をする必要がない、と言っていた人が多かったわけですが、今では持っていない人が珍しい時代になっています。さらに便利で(かつ高額な)スマホも、爆発的に普及しています。

 このような観点からも、こういったサービスもそうなっていく可能性も大きくあるはずです。

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