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イノベーション
2016.09.28

巨大企業をなぎ倒していくIoTの凄まじい衝撃
IoT時代、<企業のなりわい>が変わる

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シスコシステムズCEO(当時)のジョン・チェンバース氏(2011年1月撮影)。2015年のCESでは、IoTなどのテクノロジーによる破壊的イノベーションを唱えて注目を集めた。 Photo by Oracle PR, under CC BY 2.0.

 IoTは1980年代後半以降に次々起きたデジタル革命の中でも、桁外れにインパクトが大きい「破壊的イノベーション」(Disruption)である。そして、それは多くの企業が「持続的イノベーション」の連続でコツコツと積み上げて創り上げてきたビジネスモデルを破壊し、焼け野原に変えてしまうだろう。

 IoT導入を境に、企業の「なりわい」(生業)は大きく変わる。企業とお客様はデータを媒介にして「時間」という軸でつながり続ける。既存のサービス業はもちろんのこと、現在はモノの製造や販売に特化している多くの企業も含めて、すべての産業は「お客さまの成果ベースで稼ぐ新しいタイプのサービス業」へ進化をせざるを得なくなるのである。

 企業間の競争ルールは、もはやモノやサービスの機能的価値の優劣の対決ではなく、お客さまに新しいサービスの形で提供されるエクスペリエンス(ブランド体験価値)とエクスペリエンスの戦いになっていく。

「なりわいワード」を構想し、バックキャストでロードマップを描く

 したがって、IoT時代、企業にとって「持続的イノベーション」の積み上げで中長期の事業計画やマーケティング施策を検討するという従来型手法はもはや通用しなくなる。企業はミクロ・マクロの環境分析(SEPTEmber/5Forces分析、下図参照)によって多視点型で来るべき未来を洞察し、さらにブランドの強み・弱みを検討して自社のありたき未来=近未来の「なりわい」を構想すべきである。そして、そこからバックキャストで明確なロードマップ=地に足の着いた成長戦略を描くことが必要になる。

SEPTEmber/5Forces分析。未来の起こりうる事象をキーワードで抽出し、マクロな外部環境要因や、ミクロな業界内の競争要因を分類・分析する。
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 重要なのは、企業が未来のどの部分をつかみ、生き残りのために必死で磨きをかけるべきかという本質的な問いかけである。逆説的な言い方かもしれないが、未来は企業の意思である程度、変えることができる。「未来を予知する最良の方法は、それを発明してしまうこと」(パーソナル・コンピュータの父、アラン・ケイの箴言)なのである。

「なりわいワード」の策定。ブランドが近未来のお客さまに提供するエクスペリエンスを分かりやすく説明したもの。
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日本でも始まっている先進企業の取り組み

 日本の企業においても、IoTという「破壊的イノベーション」を乗り越えるための試みがすでに始まっている。

 そして、そういった先進企業では、今後、お客さまの「近未来のエクスペリエンスの予測や改善提案」に戦略的にAIを活用することで、サービスの精度を上げ続けていくことが期待されている。

 例えば、ユニクロはもはや「ファストファッション業」ではなく、お客さまの会員化を前提としたO2O(Online to Offline)型の「ライフスタイル提案業」(“LifeWear”業)へと転換を図るための準備を進めている。2020年を目標にスマホのアプリをインターフェイスにして、お客様が柄、素材、サイズなどの選択肢の中から魅力的な組み合わせの服を選べる「セミオーダーメイド感覚」の販売方式を始めるという(参考:http://newswitch.jp/p/1002)。

 また、コマツはスマートコンストラクションというサービスの導入によって「建設機器の製造販売業」から「建設現場の自働化オペレーション業」へと転換を遂げようとしている。この革新的なサービスが熟練のオペレーターの役割のかなりの部分をカバーすることで、建設機器の運用効率の向上や工期の短縮が可能になり、コマツのお客さまである建設会社に利益貢献がなされる。(参考:https://www.youtube.com/watch?v=hKIGKlmKBag

 B2C、B2Bを問わず、お客さまのエクスペリエンス(体験)を豊かに変える形での、成果ベースで稼ぐビジネスモデルへの進化が、IoT時代の事業経営の勝利の方程式である。企業の新たな「なりわい」を鮮明にすることで、他社の追随を許さない、ブランドの差別化へドライブをかけているだけでなく、事業成果の飛躍的向上も狙っていることにも注目すべきである。

IoT時代、既存の業界や競合の概念は意味を失う

 IoTという「破壊的イノベーション」が産業のランドスケープを変える副産物として、既存の業界や競合の概念も意味を失う。

 例えば「自動運転サービス業」はレクサス(トヨタ)、メルセデス、BMW、アウディなどの既存の自動車製造販売業に加えて、グーグルやアップルなどのIT企業、テスラ(電気自動車)に代表されるベンチャー企業、従来はサプライヤーの立場に過ぎなかったコンチネンタルやボッシュが有力プレイヤーとして相次いで参入し、まさにバトルロワイヤルの様相を呈するようになっている。

 また、金融業の世界でもグローバル化やフィンテックを武器にグーグルやアップルのようなIT企業が台頭し、ローカル(国・地域単位)でビジネスを展開する銀行・証券・保険会社を「資産運用コンサルティング業」という大きな傘で覆ってしまう可能性も少なくはないだろう。

 また同じ理屈で、アマゾンや楽天のようなECサイト運営を「なりわい」として来た企業が、テレビ、ゲーム、映画、音楽などエンターテインメントを横断する「オフタイムの楽しい過ごし方の提案業」の中核プレイヤーとして新たな存在感を増すかもしれない。

 今後、多くの企業は中長期の競争戦略を検討する際に、既存競合よりも、新規参入や代替品の脅威に対して、より注意深い目配りが必要になるだろう。

あなたの企業はIoTという破壊的イノベーションを乗り越えられるか

 2015年の家電見本市「CES」(Consumer Electronics Show、米国ラスベガスで開催)で、シスコシステムズのCEO、ジョン・チェンバースは、以下のような趣旨の発言をして大きな注目を浴びた。

「IoTによってすべての国、都市、企業、家、ヒト・・・何もかもがコネクトされる。そしてすべての、どのような業種であろうとハイテク企業になる。それはテクノロジーによってすべてのビジネスの変化のスピードがさらに増すことを意味している」

「今後10年間でフォーチュン500企業の中で生き残れる企業は40%程度に過ぎない。テクノロジーによる破壊的イノベーションは今そこに起きている現実であり、巨大企業であっても自らが破壊者にならなければ生き残れない」

 もはや「破壊的イノベーション」はスタートアップ企業の専売特許ではない。変化の激しいマーケットでは、破壊者としての気概を持ち、市場の競争ルールをその手にしたものだけが生き残る。

 翻って、あなたの企業はどうだろうか。「なりわい」を変革して、成長のためのさらなるロードマップを描く企業になれるだろうか。それとも、IoTという破壊的イノベーションを乗り越えて生き残る40%の企業のリストから漏れてしまうだろうか。

 いずれにせよ、ここ1〜2年での企業経営の舵取りがその命運を決めると言っても過言ではない。IoT時代の競争優位は、企業規模や目先のマーケットシェアではなく、「学習能力の速さ」なのだから。

JBPRESS

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