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日本から「メイド・イン・ジャパン」が消える日
「そこそこ品質」の新興国製家電、クルマがジワリ浸透

2009年11月16日(Mon) 相場 英雄

 今年9月、そして10月と当コラムで、日本企業の地盤沈下が進行し、海外機関投資家の間でジャパン・パッシング現象が顕在化していることに触れた。

 今回は、取材で旅回りが多い筆者が身近に感じた事象を紹介しつつ、世界市場を席巻してきたクルマや電器製品など、日本のお家芸とも言える製品群の先行きを大胆に占ってみたい。デフレ経済が進行する中、日本製品に生き残りの道はあるのか。

ジワリ浸透、新興国の割安製品

 まず、本稿のキモとなるキーワードをご紹介したい。1つ目のキーワードは、「ビジネスホテル」。そして2つ目は「レンタカー・タクシー」である。

 筆者は現在、東北を舞台にしたミステリーのシリーズを執筆中だ。このため、2~3カ月に1度の割合で東北全域を飛び回っている。その際、頻繁に利用するのがビジネスホテルだ。

 最近は主要ターミナル駅、あるいは高速道路のインターチェンジ付近に全国チェーンのホテルが多数進出し、1泊5000円前後で利用できる。取材経費を切り詰めている零細文筆業にはありがたいことこの上ない。

 宿泊した際に筆者が常々観察するのが、狭いシングルルームの備品の数々なのだ。全国チェーンのホテルの大半では、小型液晶テレビ、あるいは小型冷蔵庫が常備されているが、そのほとんどは韓国、中国製なのだ。

 例えば、テレビは韓国LG製、冷蔵庫は中国ハイアール製といった具合の組み合わせが大半だ。ホテルのスタッフたちにそれとなく尋ねたところ、「本部が一括して仕入れ、全国の拠点に配備している」との答えが返ってきた。

 滞在中の筆者の場合、地元ローカル局のニュースがチェックできれば画像の良し悪しは二の次。また、ディスカウント店で仕入れたビールを放り込むだけなので、冷やしてくれさえすれば事足りる。

 ホテル側にとっても、備品はそこそこの機能を満たしてくれる低価格品で十分。一括購入で備品を安く配備し、苛烈な同業他社との宿泊価格競争に寄与できる。

 業者筋で調べたところ、新興国製のテレビ、冷蔵庫をセットで大量一括購入すれば、合わせて2万円台のプライスも実現できるそうで、ユーザー、業者側にとってメリットのある構図なのだ。

レンタカーもヒュンダイ製が増加傾向

 閑話休題。

 ここ数年、取材や私用で筆者は沖縄本島や八重山諸島を旅する。沖縄では必ずレンタカーを借りるのだが、ここ数年、この分野でも異変が起きている。

 5年前はトヨタや日産、あるいはスズキのリッターカーが主流だったが、筆者の見るところ2~3年前から韓国ヒュンダイ製の小型車がその数を増やしているのだ。

 ある業者に聞いたところ、「国産よりも圧倒的に価格が安い上に、思ったより故障も少ないので、シェアが上がりつつある」という。

 同じような現象は、東京でも起こっている。深夜の取材帰りに使用する個人タクシーの間でもヒュンダイ製の2リッター超クラスのセダンが増えつつあるのだ。

 あるドライバーによれば「燃料高騰と配車増という向かい風の中で、コスト面で折り合いをつけるために国産から乗り換えた」とのこと。ドライバー間の口コミが広がり、ヒュンダイ製タクシーの数は徐々に増えているそうだ。

 ここまで触れてきた事象は、日本市場の全てを捉えたものではない。ただ、「そこそこの機能と低価格」で満足する日本人の消費者のニーズを確実に捉え始めたものだと筆者は考えている。

 ユニクロや大手スーパーが展開する格安衣料品の大半は新興国で製造されている。日本人の多くが「メイド・イン・ジャパン」にこだわらなくなった昨今、電化製品やクルマも同じような現象が今後広がっていく、というのが筆者の見立てだ。

「至れり尽くせり型」は岐路に差しかかっている

 「ヒュンダイ自動車=7%」「ハンコックタイヤ=20%」「サムスン電子=12%」・・・。これら韓国の主要メーカーの数値は、今年第3四半期の営業利益率だ。

 営業利益率の数値が高いほど投資家の目を引きやすくなるのは明白。同時期の日本メーカーは、営業損益が赤字から黒字に転換した程度であり、比較対象にはほど遠いのが現状だ。

 韓国、あるいは中国、台湾勢が、「そこそこ品質」で、日本あるいは世界中の市場でシェアを伸ばしつつある。薄型テレビのように利益率が高く、かつ高い技術、品質が求められる電化製品でも、既に日本製品のシェアを奪っているのは周知の通り。この躍進ぶりが、業績内容にもしっかりと反映されている。

 サムスン電子はもはやグローバルベースで運用する投資家には必須銘柄となっている。そのほか、昨秋のリーマン・ショック以降の北米自動車市場ではヒュンダイや起亜自動車がシェアを伸ばしている。

 「日本では馴染みの薄いハンコックタイヤにしても、日欧のハイパフォーマンスタイヤに引けを取らない品質を実現し、世界市場で広く売られている」(外資系証券アナリスト)

 世界中の消費者の間で低価格志向が強まる中、日本製の「至れり尽くせり型の高機能商品」は消費者のニーズからズレ始めたと考えるのは早計だろうか。

 日本市場専用の携帯電話端末の戦略が行き詰まっている現状、他の主力工業品も戦術の見直しが必要なタイミング、岐路に差しかかっているのではないか。