JBpress>海外>The Economist [The Economist]

技術立国日本のトップ企業
目に見えないが必要不可欠

2009年11月11日(Wed) The Economist

(英エコノミスト誌 2009年11月7日号)

日本の中堅電子企業には、ハイテク産業の多くの分野で支配的な立場を獲得している会社が多い。彼らは今後もその地位を保てるだろうか?

G8「世界は原子力時代に突入」、原油高や地球温暖化が背景に

原発建設ラッシュの昨今、不可欠な部品を得るには日本製鋼所の室蘭製作所に頼るしかない(写真はイメージです)〔AFPBB News

 現在、全世界で建造中の原子炉は約40基ある。設計は米国、中国、フランス、日本、ロシアの6社が請け負っているが、放射能を封じ込める大型鍛鋼圧力容器については、すべての企業が北海道に拠点を持つ日本製鋼所に頼るしかない。

 比較的小型の圧力容器や溶接容器ならばほかにもあるが、600トンのインゴット1つから、1億5000万ドルもする原子炉の核心部品を作る技術を持っているのは日本製鋼所だけだ。

 このような特権的な立場にある企業は極めて少ない。だが日本製鋼所は、日本株式会社のあまり評価されていない特質を表す最も目立った事例に過ぎない。日本には特殊な分野で世界市場を制している中規模企業がたくさんある。

 その中には比較的単純な技術に関わるものもある。例えばシマノは、全世界の自転車のギアとブレーキの60~70%を供給して毎年15億ドル前後を売り上げている。YKKは全世界で生産されるファスナーの約半分を作っている。以前はそれをもはるかに超えるシェアを持っていた。

 だが、何と言っても日本企業が頂点に君臨するのは、電子技術、工学、材料科学における、ごく特殊な専門分野だ。その技術の多くは一般の消費者には見えないが、特定の製品を作るのに不可欠なため、日本企業は絶大なシェアを確保している。

 例えば、コンピューターに使われるハードディスク駆動装置(HDD)のモーターは、75%が日本電産製だ。自動車のバックミラーに組み込まれた小型モーターの90%はマブチモーターが作っている。これらの製品は、部品や素材、製造装置であることが多い。

 東京エレクトロンは液晶パネル製造に用いられるエッチング装置の80%を製造している。また、コバレントマテリアルはコンピューター用チップ製造時にシリコンウエハーを格納するコンテナの60%を押さえている。

選択肢:日本製か日本製?

 分野によっては、トップを占める日本企業の実質的なライバルが日本企業しかなく、そのために供給企業が複数あっても、やはり日本が不可欠であるという状況になっている。信越化学工業は回路パターンを半導体ウエハーに焼き付ける際に使われるフォトマスク基板で、50%の市場シェアを握っているが、それに続く企業(コバレント、日本板硝子、旭硝子、東ソー)もすべて、やはり日本企業だ。

 日本勢はほかにも、集積回路パッケージのボンディング素材や液晶パネル製造用の露光装置(ステッパーと呼ばれるもの)でも同じように市場を掌握している。こうした寡占状態でも、これまで独占禁止法違反を問題にされたことはほとんどない。

 パナソニック、シャープ、ソニーなどの日本の大手電機メーカーが中国、韓国、台湾などのライバル企業にシェアを奪われているのに対して、これまで紹介したような、より規模が小さく知名度の低い日本企業は、世界のハイテク業界が依存するニッチ分野を支配し続けている。日本語には、こうした企業を指す「中堅企業」(堅固な中規模企業)という言葉すら存在する。

米アップル4-6月期決算、iPhone好調で好決算

米アップルも、中核部品については日本企業に依存しているという〔AFPBB News

 製品の表側に刻印されるブランドがアップル、ノキア、あるいはサムスンだとしても、内部には日本製品が詰め込まれているのだ。

 アップルの関係者によれば、同社も中核部品については日本企業に依存しているという。他国の部品会社では同社の厳しい基準を満たすことができないからだ。

 「目を引く製品ではないが、こうした製品なしには、半導体チップや液晶パネルを作ることはできない」と語るのは、コンサルティング会社モニターグループの東京支社所属で、ハイテク製造業を専門領域とするアルベルト・モエル氏だ。

 経済産業省によれば、日本企業が世界シェアの70%以上を占める、市場規模10億ドル以上の技術セクターは少なくとも30ある。例えば、液晶パネルの偏光板に使われる特殊フィルム(世界市場全体を日本企業で独占、市場規模は2700億円)や、電気機器の電流を制御する積層セラミックコンデンサー(5400億円市場の77%を日本勢が占める)などである。

 日本が20年近くも続く経済低迷を克服しようと苦闘を続け、世界第2位の経済大国の地位を中国に譲ろうとしている中で、こうした日本の優れた技術は日本産業の持つ強みを改めて思い起こさせるものだ。

 またこれは、西側の経営のプロが何十年も続けてきた批判、つまり流動性の低い労働市場から株主の権利が弱いことに至るまで、日本特有の事業風土によって各企業の成長が抑え込まれているという批判に対する回答でもある。今になってみれば、日本の産業界は何か正しいことをしてきたと言わざるを得ないだろう。

 もちろん、日本以外の企業でも世界市場で同じような覇権を握っているところはある。米マイクロソフトのOS(基本ソフト)「ウィンドウズ」は世界の10億台を超えるパソコンのうち90%以上で使われており、そのパソコンの80%には米インテルのチップが搭載されている。英アーム(ARM)が設計したチップは、スマートフォン上でソフトウエアを動かすアプリケーションプロセッサーの市場を独占している。

 ドイツの「Mittelstand(ミッテルシュタント)」――西側世界で日本の「中堅企業」に最も近い存在――も、多くの目立たない分野で世界をリードしている。

 ドイツにおけるミッテルシュタントと同様、日本の中堅企業も国内経済の単なる一部ではなく、産業構造の中核に位置している。中堅企業は海外企業の必要不可欠な需要を満たす存在であるだけではなく、日本の有名電機メーカーの存立を担う基盤でもある。

 驚くことに、日本企業が今のうらやむべき地位を維持できるかどうか疑問視する声も出始めているが、今のところその掌握力は概ね強固に保たれている。

小さなものに宝あり

 日本の技術力を最もよく示す例は、肉眼で見えないほど小さな部品、コンデンサーだ。中には塩1粒ほどの大きさで、見るのにはルーペが必要なものさえある。

 コンデンサーは回路に電気を蓄えるための部品で、多くの電子機器の基本部品の1つだ。その単価は1個当たり0.25セントから20セント程度だが、携帯電話1台には100個、パソコンには1000個が必要になることもある。この分野では日本の村田製作所が世界市場の40%を握っている。

 村田製作所のコンデンサーの利益率は分からないが、投資銀行マッコーリーの試算によれば、同社全体の粗利益率は50%前後だ。日本勢全体(ほかにはTDK、太陽誘電などがある)で、コンデンサー市場の80%のシェアを占める。

 だが、この数字は2000年代初頭の90%からは低下している。韓国のサムスン電機や台湾の国巨(Yageo)をはじめとする海外の野心的な競合企業に押されている状況だ。

 同様の強みを誇る日本企業は、ほかにもある。日東電工は市場でトップを走る製品を20以上持つとしている。そのほとんどは液晶ディスプレーの製造に関わる製品だ。コバレントマテリアルも首位製品を複数持っており、例えば電気モーター向け部品のカーボンブラシでは70%の市場シェアを握る。

 三菱化学は自然白色光を発するLED電球用の赤色蛍光体の市場をほぼ独占している。信越化学工業は一部の半導体用シリコンウエハーで首位を走っている。京セラは数種類の集積回路部品でトップの座にある。

 コンピューターに使われる半導体の製造プロセスを見れば、日本の独占状況がよく分かる。半導体製造は多くの工程から成り、そのうち、ウエハー処理、薄膜形成、コーティング・露光・現像、配線接続・パッケージングの4工程では、日本企業の技術が不可欠だ。使用される材料については4工程のすべてで、装置については3工程で日本企業が市場を支配している(図1参照)。

 「こうした装置や材料では、どの国の電機メーカーも品質と信頼性の高さから日本メーカーに頼っている」。韓国人の半導体専門家で、先頃NECエレクトロニクスの取締役を退任したT・W・カン氏はこう述べる。自動車のダッシュボード(計器盤)がたかが1個数円程度の部品の不良のせいで故障するなどということは、誰でも避けたい事態だ。

 ハイテク製品の多くはコモディティー化(汎用品化)していったが、一部の部品は、継続的な技術革新が必要なことから、そうなってはいない。ゆえにこうした部品の製造にはいまだ高い参入障壁がある。そして、最終製品の利益率は悪化しているが、特化したハイエンドの部品は今なお利幅が大きい。

 日本のハイテク産業のチャンピオン企業には、共通した特徴がある。研究開発(R&D)に相当な投資をしている。基本的な製品については海外工場で作っているが、ハイエンド製品の生産拠点は日本に置き、こちらは、日本人がよく言う言葉で「ブラックボックス」化している。

 サプライチェーンも自前で持っていることが多い。水晶部品を使うことのあるチップメーカーは通常自前で作っている。中にはコスト管理や供給元からの独立性の確保、さらには自社技術への理解を深化するために、製造装置自体を内製している会社もある。

 成功の大きな要因を聞かれれば、経営者は決まって顧客の質の高さを挙げる。こうした答えを聞くと、差し当たりは台本通り、あるいは恐らく日本人に典型的な謙虚さだろうという印象を受ける。優良顧客が厳しい基準を設け、供給元の企業にレベルアップを求めるのは当然だ。

 だが、ここにはそれ以上の意味がある。コバレントマテリアルの香山晋社長が指摘するのは、日本企業が秀でている部品、装置、材料は高度にカスタマイズされているという点だ。

 顧客企業と長年にわたる密接な協力関係を築いて初めて、供給元の企業は顧客の将来の技術計画を見通せるようになり、優れた技術を持つ供給企業ならば解決できるような微妙な問題について教えてもらえるだけの信頼を得ることができる。いったん技術でトップに立った企業を追い抜くのは容易ではない。

 さらに言えば、技術に関する知識には形にできるものだけでなく、暗黙のものもある。マニュアルを書いたり特許明細書を読んだりするだけではそうした技術は伝達できない。これは長年にわたって、仲間内で仕事をすることで蓄積されるものだ。これが競合相手にとっての参入障壁となる。

 だからこそ企業は、専門性の高いハイテク部門については、その他の領域で崩れつつある終身雇用を守ろうとするのだ。

 企業の強みはその時々の株価ではなく、従業員の集団心理の中に蓄積されるというこの考え方が分かれば、日本企業がM&A(企業の合併・買収)を嫌う理由も見えてくる。日本企業は買収について、西側のように事業の自然な結合プロセスと捉える見方はせず、これに抵抗する。

 皮肉なことに、日本の隠れたチャンピオン企業の成功は、日本の大手電機メーカーに打撃を与えたハイテク産業の構造変化が一因となっている。どの国の企業も、製造業に参入するための装置、薬品、ノウハウなどを買えるようになったことで、日本の有名ブランドは苦境に立った。だが、まさにそうした装置や化学品、ノウハウを提供する企業も、日本にあるのだ。大手メーカーが苦しむのをよそに、中堅企業は大いに潤った。

迫り来る海外企業

 ただし、いかに素晴らしいといっても、日本企業がずっと優位を維持できると保証されているわけではない。日本企業が市場を制覇できたのも、1つには外国(大抵は米国)の技術を取り入れて改善したからであり、市場支配も、最初は低コストで、次に品質を高め、最終的に技術的優位によって、と順を追って確立したものだ。

 その過程で、日本企業は顧客と緊密な協力関係を築き、顧客の正確なニーズを詳しく知り、そのニーズを満たした。先端技術と顧客の信頼は、堅固な参入障壁を築いている。そして今問題になっているのは、日本がかつて米国に対してやったことを、中国、韓国、台湾が日本に対してできるのかどうか、ということだ。

 日本は優位を保てるのかどうかという不安の根源には、一部の経営者や政府関係者の間で語られる、日本の企業は自らの技術を価値に変えるべく力を尽くしていないのではないかという思いがある。

 信越化学工業の取締役で、特許関係担当研究開発部長を務める岡本博明氏に至っては、業界が危機に瀕していると考えている。「韓国と台湾の会社が追いついてくる可能性があることは分かっている。国内には競合相手がたくさんいて、(特定の製品で)大きな利益を上げているようなところはない」と、岡本氏は危機感を口にする。

 利益が低いということは、研究開発に投資できる資金が少ないということだ。「そのため、台湾、中国、韓国の会社にも競合の余地が生まれる」と同氏は語る。

 そうは言っても、市場の独占はスタート地点としては非常に有利だ。狭い市場で一握りの会社が競合している場合は、合併すべきだと考える経営者もいる。こうした人たちは、他社との提携を忌避する日本企業の内向性を嘆く。

 東京大学の客員研究員である齋藤旬氏は、日本の税法が協力関係の締結を阻害していると指摘する。モニターグループのモエル氏は、日本の企業がもっと外向的になり、技術の管理をもっとうまくできるようになれば、新たな収益源を生むチャンスをつかめると考えている。

 一方、圧倒的な技術力を獲得する原動力となった日本企業の特質は、同時に成長を阻害するリスクともなり得る。

 株主からの圧力がないため、企業は長期的な事業に専念することができた。しかしそのために、効率を高めて弱い事業から撤退するという市場の原則が働かない。垂直統合は供給と品質を保証できるが、他社の方が優れている非中核事業も手がけることになってしまう。終身雇用はノウハウを社内にとどめておけるものの、会社は柔軟性を失い、社員は雇用の流動性を失い、新鮮なアイデアも圧殺されてしまう恐れがある。

 「率直に言って、変化はもう始まっている」。太陽誘電のある幹部はこう打ち明ける。この幹部は韓国製品は優れていると認め、「他社が後を追ってくるのが見える。手をこまぬいていては、いずれ追い越される。我々は必死になって、新たな活路を見出そうとしているところだ」と述べている。

 これに対して、日本はどんな手を打っているのか?

 可能ならば、さらなるイノベーション(技術革新)を進めている。集積回路基板(チップや電子部品を配置する土台)では、これがうまくいった(図2参照)。2002年から2007年にかけて、台湾勢がシェアを倍増させ、韓国企業が4倍に伸ばす一方、日本勢のシェアは75%から34%まで大幅に落ち込んだ。

 そこで日本は高付加価値製品にシフトし、マイクロプロセッサー・ユニット(MPU)用基板に集中した。2007年にMPU向けに出荷された基板は数量では全体の3%に過ぎないが、金額ベースでは市場全体の30%を占めた。

 しかし、イノベーションだけでは足りないこともある。数量も非常に重要だ。4年前まで、日本は世界の太陽電池パネルの約半分を生産していたのに、今ではシェアが20%以下に落ち込んでいる。日本製品は最高性能を維持しているが、生産の中心は中国に移ってしまった。

 さらに、最も成長率の高い市場、つまり経済的に貧しく、必要最低限の機能を持つ製品が求められる中国やインドのような国では、最高の技術はそれほど有り難がられない。日本の携帯電話メーカーは世界最高水準の機能を備えた端末を作っているが、海外でのシェアはゼロに等しい。

 中堅企業への警鐘となるのは、日本の2つの大企業、キヤノンとニコンが、半導体製造装置の1つであるステッパーの分野でオランダのASMLに敗れた経緯である。

 1990年時点では、ASMLのシェアは10%にも満たず、上記の日本企業2社が市場を支配していた。しかし今ではASMLが65%のシェアを握っている。日本の経営者は企業の自己満足を戒める時によくこの事例を引き合いに出す。では、ASMLはどうやって勝利したのだろうか。

 1990年から2000年までASMLの社長を務め、勝利の戦略を練ったウィレム・マリス氏は「当社は、ニコン、キヤノンと正面から争うにはあまりに小さすぎた」と振り返る。日本企業ははるかに大きな経営資源を抱え、すべてを内製化していた。

 そこでASMLは製品をモジュール式に設計し直し、各モジュールを専門企業に外注した。例えば、精密レンズはドイツのカール・ツァイスが製作した。これこそ、ASMLがイノベーションを加速し、日本企業を凌ぐ原動力となったというのが、マリス氏の解説だ。

 ASMLのオープン性は、単なる比喩ではなく、文字通りの形でも現れた。「例えばサムスンに納入した装置が壊れた時、日本人が20人やって来て、装置をテントで覆ってから修理をしたので、中で何をしているのか分からなかった」とマリス氏は語る。

 ASMLは正反対のアプローチを取り、顧客に問題点を見せ、その解決法を公開した。今でも、ニコンとキヤノンは閉鎖的なままだ。そして両社はステッパー事業を統合する方が理にかなっているにもかかわらず、依然として別々に事業を行っている。

古い技術、新しい時代

 日本の技術的な成果の根源は、昔から優れていた伝統技術にある。高度なファインセラミクスの技術は、陶器の技能にさかのぼる。素晴らしい製鋼技術は、かつての刀鍛冶の系譜を引くものだ。

 日本人なら、これは「モノヅクリ」と「カイゼン」の文化から来るものだ、と言うだろう。しかし、日本の習慣がすべてプラスに作用するわけではない。相手が外国人であれ他社であれ、よそ者を嫌う文化は、現代では日本の衰退の一因になりかねない。

 技術を共有したり協力し合ったりするのを避けたがる企業の風土を変えようと、経産省は今年7月に「株式会社産業革新機構」を設立した。

 民間企業の人材が数多く参加するこの組織は、一種の国設プライベートエクイティファンド(非上場企業投資会社)の役割を果たし、総額90億ドルに上る資産と信用保証を持つ。その狙いは将来性のある知的資産に投資し、スピンアウト企業の設立や合併促進を目指すというものだ。

 「日本企業は決して合併しようとしない」。今後ニコンとキヤノンのステッパー事業での二の舞いを演じる企業が出てくるのではないかと恐れている経産省のある高官はこう嘆く。日本の技術的優位について、この高官は「失うわけにはいかない」と言う。

 コバレントマテリアルの香山社長も、かつては日本の閉鎖的なアプローチが功を奏したと認めながら、今は状況が違うと言う。「我々はもっとオープンに考えなければならない」

 日本の隠れたトップ企業は、市場の支配を続けるうえで必要な財務力や技術力を維持するために、恐らく何らかの形で結束する必要に迫られるだろう。また、独占禁止法に関わる当局の監視も、今までは概ね逃れてきたとしても、今後は警戒しなければならないだろう。

 米国の当局は光学ドライブ(パソコンやDVDプレーヤーに使われている部品)のメーカーを調査しているし、日本の公正取引委員会も、合併によって強力な国際企業が生まれるとしても、国内市場における合併の影響を注視する傾向にある。

 日本製鋼所について言えば、その優れた技術は伝説ですらある。同社は今でも、伝統技術を使って日本刀を作っている。だが、原子炉格納容器の絶対的優位も、中国や韓国などから競合相手が現れ、終焉に向かいつつある。

 「そう遠くない将来に、少なくとも5社から選べるようになるはずだ」。原子炉を建造するウェスチングハウスのアリス・キャンドリス社長はこう言いつつ、「残念ながら、そのどれもピッツバーグの会社ではないが」と付け加えた。ピッツバーグはウェスチングハウスの本拠であり、かつては米国の製鉄産業の中心地だった。

 歴史の教訓は明らかだ。一度専門技術が失われれば、取り戻すのは困難なのである。

© 2009 The Economist Newspaper Limited. All rights reserved.
英エコノミスト誌の記事は、JBプレスがライセンス契約 に基づき翻訳したものです。
英語の原文記事はwww.economist.comで読むことができます。