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ポルシェとVW:ピエヒの復讐

2009年05月21日(Thu) The Economist

(英エコノミスト誌 2009年5月16日号)

ポルシェの敗北の大きさが今ようやく明らかになってきた。

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フェルディナント・ピエヒ氏(右)はポルシェ創業者フェルディナント・ポルシェの孫〔AFPBB News

 欧州の自動車業界で1つ確かなことがあるとすれば、それはフォルクスワーゲン(VW)会長のフェルディナント・ピエヒ氏(72歳)に逆らっても何の得にもならないということだ。

 先日、サルディニアでハッチバック「VWポロ」の新モデルを発売した際、ピエヒ氏は強気ムードを漂わせ、ポルシェ一族および強情なポルシェCEO(最高経営責任者)のヴェンデリン・ヴィーデキング氏に対する勝利を宣言した。

 持ち株会社ポルシェ・オートモービル・ホールディングの議決権株を100%支配するポルシェ一族とピエヒ一族は5月6日、ポルシェが自社の15倍の規模を持つVWを買収するというありそうもない企てを中止することで合意した後、4週間かけて両社の合併の条件と組織について詳細を協議することにした。

合併新会社の主導権を握るのはVW

 だが、個人でポルシェ株の10%を所有するピエヒ氏が今回極めて明確にしたのは、運転席に座るのは自分とVWであって、ほんの数週間前に思われていたように、従兄弟のヴォルフガング・ポルシェ氏やヴィーデキング氏ではない、ということだ。

 合併後のグループの最終的な形はまだ決まっていないが、ピエヒ氏は大まかなヒントをいくつか与えてくれた。

 これ以外にも2つの選択肢が検討中だとされるが、ポルシェがVWグループに完全に統合され、VWグループのほかの7つの自動車ブランド――VW、アウディ、スコダ、セアト、ベントレー、ランボルギーニ、ブガッティ――に加わることはほぼ間違いなさそうだ。

 そして、その指揮を執るのはVWのCEOマーティン・ヴィンターコーン氏になるだろう。

 満足げなピエヒ氏は、自分のキャリアを「邁進する」ことに慣れた男が、「非常に多くの階段を下りて」、「謙遜」を実践しなければならなくなることを考えると、ヴィーデキング氏が合併後の新会社でただの部門長になるのを受け入れることは「想像できない」と言った。

 ピエヒ氏は、ポルシェがVWの株式の50.8%を取得する過程で積み上げた90億ユーロ(122億ドル)の債務を、VWが引き受けることも想像できないという。

数週間で一気に頓挫したポルシェのVW買収計画

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ポルシェは15倍の規模があるVWを買収しようとしていた・・・〔AFPBB News

 そして、かつて尊敬を集めたポルシェのCFO(最高財務責任者)ホルガー・ハーター氏に上級職を与えることについては、まあ、VWの支配権を獲得する企てをヴィーデキング氏とともに編み出した共同立案者として、計画失敗の責任を引き受けなければならないだろう。

 2年以上かけて進められてきた2人の大胆な計画は、ものの数週間で頓挫した。

 昨年末時点では、ポルシェの戦略は予定通り進んでいるように見えた。ポルシェは10月、VWの議決権株を42.6%まで買い増したことや、担保付きオプションという形でさらに同社株の31.5%を取得したことをなかなか認めず、VW株を空売りしていた投資家を一斉に買い戻しに走らせるという騒動を引き起こした。

 11月下旬には、保有するVW株の価値が68億3000万ユーロ増加したおかげで、売上高を超える過去最高益を発表する一方、ヴィーデキング氏は、VWの「支配的地位」を望んでおり、オプションを行使するために100億ユーロの信用枠を使うつもりであることを認めた。

 しかし、それは実現しなかった。3つの要因がポルシェの計画を妨げたのだ。

90億ユーロに膨れ上がった債務の重み

 ポルシェは今年1月、VWの持ち株比率を現在の50.8%まで増やし、その過程で同社の純債務はほぼ3倍の90億ユーロまで膨れ上がった。折しもポルシェの自動車事業がぐらつくさなかのことで、債務の利息を払う資金が減っていった。

 2つ目の要因は、信用市場の状況が借り入れの継続を難しくしたことだ。3月24日には、銀行にVW株を担保として差し入れたうえで、6カ月以内に33億ユーロを返済することを約束して、ようやく既存の融資を借り替えることができた。

 3つ目の要因は、ポルシェがいわゆる「VW法」の廃止を当てにしていたことだ。

 所有する株式の数に関係なく、個々の株主の株式所有を議決権の20%に制限するとともに、独ニーダーザクセン州に主要な決定に対する拒否権を与えるVW法が廃止されていれば、ポルシェは計画通りにVW株の75%を取得し、自社より大きなVWの手元資金――今年3月末時点で107億ユーロに上る――を手に入れることができただろう。

 しかし、ドイツ連邦政府による最近の法改正にもかかわらず、この法律は今もニーダーザクセン州の拒否権を保証している。

 同州のクリスティアン・ヴルフ首相は、ポルシェをご都合主義の略奪志望者と見ている。ヴルフ首相やVWの強力な労使協議会のベルント・オスターロー議長の支持もあって、ピエヒ氏は、自分がポルシェに条件を指図する立場に立っていると感じている。

 決着させるのが最も難しい問題は、ポルシェが少なくとも50億ユーロ削減したいと考えている同社の債務である。

どう転んでも、ピエヒ氏は望んだものを手に入れる

 ピエヒ氏は、ポルシェの株式を外部の投資家に売却することには反対だと言っている。たが一方で、VWの信用格付けが傷つくことを恐れて、VWがその債務を引き受けることはないと言って譲らない。

 となると、残る選択肢は2つだ。

 2つの創業一族が自分たちの資産からカネを出すか、あるいはVWが単純にポルシェの自動車事業だけを買い取り――モルガン・スタンレーのアナリスト、アダム・ジョナス氏は、単独ベースでその価値を50億~60億ユーロと見積もっている――、持ち株会社を純粋な金融会社にすることだ。

 どちらを選んでも、ピエヒ氏は望み通りのものを手に入れられる。世界第2位の自動車メーカーに対する絶対的な支配と、甘い復讐である。

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