福岡県久留米市にあるラーメン店「大砲ラーメン」。豚骨ラーメンの老舗として人気を博すこの名店に、1人の外国人旅行者が訪れた。その外国人は親日家なわけでも、特別なラーメン通でもない。そんなイチ外国人が、どうやってこの店を探し当てたのか。尋ねてみると、「『IS JAPAN COOL?』 を見て、ここまでやって来た」という。

 「IS JAPAN COOL?」とは、外国人に向けて日本をPRするサイトである。私たち日本人にはあまり知られていないが、このサイトを見て日本に関心を持ち、実際に訪れくる外国人観光客が増えている。このサイトは、日本の魅力を外国人に伝えるための極めて有力で効果的なツールとなっているのだ。

立ち上げから1年で爆発的な人気に

 日本政府観光局によると、2013年7月の訪日外国人数が過去最多の100万3千人を記録したという。 2013年4月の92万3千人を8万人以上上回る結果となり、初めて100万人台を突破した。 東南アジア諸国の査証緩和や、円安などの影響が大きいと見られるが、それとともに「IS JAPAN COOL?」の貢献があることも確かだろう。2012年2月に立ち上げられた同サイトの訪問者は、わずか1年あまりで70万人を超え、プレゼントキャンペーンを実施すれば、150カ国から6万人以上の外国人応募者を集める人気ぶりだ。

ANAマーケティング室マーケットコミュニケーション部 スーパーバイザーの佐野晶太郎氏

 「IS JAPAN COOL?」を作ったのは一体誰なのか? サイトを見ても制作者や企業の名前が前面に出ていないため、観光庁などの公共機関の手によるものかと思ってしまうが、実はそうではない。作ったのは航空会社のANA(全日本空輸)である。自社PRを極力排して行っている異例のインバウンド戦略の一環なのだ。

 担当を務めるANAマーケットコミュニケーション部の佐野晶太郎氏は、このプロジェクトを立ち上げた理由をこう語る。

 「2011年の東日本大震災を機に、訪日外国人の数は大きく減少しました。それから1年経って、ANAとして何をすべきか考えたとき、まずは『日本の今』をきちんと発信することが重要だと感じたのです。

 そしてそのコンセプトのもとでは、企業名をなるべく伏せて、徹底的に日本の魅力を伝えるべきだと思いました。外国人にとってANAの認知度は必ずしも高くありませんし、航空会社の発信となると、どうしても広告戦略と捉えられてしまいますから」