ドイツのテレビチームが無人の潜水艦を使って、イギリス海峡の海底124メートルのところで、核廃棄物の入ったドラム缶の撮影に成功した(ユーチューブ動画:「Tausende Tonnen Atommüll im Ärmelkanal[何千トンもの核廃棄物がイギリス海峡に]」。

 1950年から63年の間に、イギリスとベルギーは、この海峡にドラム缶2万8500個分の核廃棄物を沈めた。

欧米諸国が沈めた大量の核廃棄物が眠る大西洋や北海

 関係者は、これらのドラム缶はとっくの昔に錆びて、放射能物質は大海に流出し、すでに希釈して無害になっていると信じていたらしいが、このたびの撮影で、そうではないことが分かった。

 もちろん、壊れているドラム缶も撮影されているが、原形を保っている物が2個撮影されているのだ。これが、壊れなかった最後の2個というわけではないはずで、少し探せば、おそらく近辺に、核廃棄物入りドラム缶は、まだまだたくさん転がっているのだろう。

フランスのコタンタン半島西方沖合い、イギリス海峡に浮かぶチャンネル諸島。一番北がオルダニー島(ウィキペディアより)

 国際原子力機関(IAEA)の報告によれば、この2万8500個のドラム缶は、1万7244トンの軽度の汚染の核廃棄物とともに、チャンネル諸島のオルダニー島の北側の断層部分に沈んでいる。

 このたび、調査チームが計量すると、この海域の放射線量が高かった。

 ドラム缶の廃棄された場所は124メートルと深度が浅いので、これ以上放射能が漏れ出すと、海水が汚染され、困ったことになる。まずいことに、ここは漁業の行われている場所でもある。

 ほぼ、あるいは、全く不可能なことを、常に力強く主張する緑の党は、ドイツ政府がこのドラム缶の引き揚げに向かって尽力すべきだと言っている。

 しかしながら、イギリスとベルギーが、ドイツの提案に素直に従うとは、とても思えない。「だったら、ドイツがやってちょうだい」と言われるのが落ちだ。

 核廃棄物は、どうやら大西洋や北海にもたくさん沈んでいるらしい。やはりIAEAの資料によれば、1949年から82年の間に多くの国が核廃棄物の詰まったドラム缶を海に捨てた。ドイツももちろん捨てている。