(英エコノミスト誌 2009年5月2日号)
「普通」に戻り始めたドイツは、自国中心主義に傾き、欧州の一員としての意識を失いつつあるあるように見える。
2007年に、ドイツはEUの基盤となったローマ条約調印50周年を盛大に祝ったが・・・(写真はベルリンにあるブランデンブルク門)〔AFPBB News〕
5月1日、欧州10カ国が欧州連合(EU)加盟5周年を祝うことになっていた。これは盛大に祝って然るべきだった。何しろ、ポーランドやハンガリーなどが加盟した2004年のEU拡大は、戦略的な英知が発揮された希に見る瞬間だったのだから。
残念ながら、ドイツが取った狭量で身勝手な行動のせいで、5周年を前に祝賀ムードに水が差されてしまった。
ドイツ政府は4月末、2004年にEUに加盟した東欧8カ国からの労働者に対する雇用規制を継続すると発表した(残り2つの新規加盟国は小国のキプロスとマルタで、規制の対象外となっている)。
この規制は2009年中に撤廃される予定だったが、ドイツ政府は、「労働市場の深刻な混乱」が起きた場合、あるいはその恐れがある場合、2年間の規制延長を認めるという条項を発動させたのである。
ポーランドやスロバキアの労働者が自由に労働市場を移動できるようになると、「深刻な」混乱を招く恐れがある、などという発想は馬鹿げている。
ドイツでは、いまだに複数の産業分野で熟練労働者が不足している。それにドイツは、技能を持たない無数の移民たちの目に黄金郷と映るような国ではない。最新の予測によると、ドイツの経済は2009年に6%縮小する見込みだ。
雇用規制の継続は、ドイツ国民の雇用不安に配慮した政治的な判断だった(写真は昨年3月にミュンヘンで行われた賃上げ要求デモ)〔AFPBB News〕
規制を継続するという決断は、完全に政治的な判断だ。ドイツでは、6月に欧州議会の議員選挙、秋には国の総選挙が控えているからだ。
EUでは、ドイツのほかにはオーストリアだけが、2004年の加盟国に対していまだに労働市場を開放していない。しかし、オーストリアに対して非現実的だと非難する声はない。
ドイツはオーストリアと違わなければならないのだ。
というのも、ドイツはほかのどの国よりもEUの拡大に尽力した。ドイツはEU最大の資金拠出国として、EU拡大に伴う金銭的な負担を最も多く負うことにも同意した。EU拡大に消極的なフランスを説得したのもドイツだ。
では、ドイツは欧州全体の利益よりも国益を優先させる「普通の」(すなわち利己的な)国になってしまったのだろうか。
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