(英エコノミスト誌 2009年5月2日号)
パンデミックは恐ろしく深刻な問題だ。それゆえ、たとえ目先の脅威が収まったとしても、世界は対策を強化しなければならない。
鳥インフルエンザが中国や東南アジアを襲うと思われていたが、実際に発生したのはメキシコの豚インフルエンザだった〔AFPBB News〕
どんな戦闘計画を練ったところで、ひとたび目の前の敵との戦いが始まれば、通用しないと言われる。インフルエンザのパンデミック(世界的な大流行)の対抗策としてここ数年間に練られてきた計画は、確かにその通りだった。
世界の保健当局の司令官たちは、敵として鳥インフルエンザ――恐らくニワトリから人間に感染するもの――を想定し、まずは中国南部や東南アジアが襲われると考えていた。
ところが実際には、このインフルエンザはある1頭の豚から発生し、アジアではなくメキシコを襲った。
とはいえ、ニワトリのおかげで助かった面もある。世界は1968年以降、インフルエンザのパンデミックを経験していなかった。
40年間もの長きにわたって何事も起きなければ、人はその危険性を忘れてしまうものだし、1997年に香港で鳥インフルエンザが発生してから10年間、それがあと1段階変異していれば世界中に感染が拡大したかもしれないという可能性を考慮してこなければ、本当に忘れ去っていたことだろう。
4月29日、世界保健機関(WHO)は新型インフルエンザの警戒レベルをパンデミックの1段階手前まで引き上げた。メキシコのフェリペ・カルデロン大統領は感染の拡大を食い止めるため、5 月1日から5日まで、不要不急の業務の休業と、国民に自宅待機を要請する声明を出した。
ここまで警戒する理由の1つは、犠牲者の多くが若く、インフルエンザを除けばほかに病気にかかっていない人たちだからだ。普通のインフルエンザでは、主に高齢者が犠牲になる。
もっとも、今回のインフルエンザが死因として特定されたケースはまだそれほど多くない。確認例の数が少ないのは、正確な検査が行われていないためでもあるだろう。しかし、疑いのある事例をすべて含めたとしても死者は数百人で、毎年米国でインフルエンザによって死亡する3万人という数字に比べれば、足元にも及ばない。
では、私たちはどの程度警戒すればよいのだろうか?
とにかく対策を
今回の流行に関しては、判断を下すのは時期尚早である。その理由の1つは、メキシコ国内でウイルスがどれくらい広がっているか分からないことだ。
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