(英エコノミスト誌 2009年4月18日号)
路上の停戦は、恒久的な政治の安定にはつながらないかもしれない。
4月12日、首相官邸に押し寄せた新タクシン派の赤シャツ軍団〔AFPBB News〕
タイを訪れ、飲み屋をはしごする観光客は、ささいな揉め事が一瞬にして殺し合いに発展する危険性があると注意される。政治的暴力についても同じことが言える。
4日間にわたる騒乱でタイは大揺れした。パタヤではアジア地域のサミット会場に暴徒が乱入。続いてバンコクでは軍がデモ隊を武力鎮圧し、4月14日に反政府勢力が交渉の末、政府当局に降伏した。
秩序を取り戻すと、ぐらついたタイ政府とアピシット・ウェチャチワ首相はようやく一息つくことができた。
しかし、停戦は和平協定ではない。タイ政府が絶え間ない政治紛争から抜け出す道を模索する中で、さらなる不和が生じるのはまず間違いない。政治家は改革を口にするが、何を変えるかについては合意できずにいる。
両陣営で渦巻く怒りと苛立ち
軍部は差し当たり、アピシット首相側について団結したものの、彼らの動機は定かでない。党派的な報道機関にも煽られて、対立する政治陣営では怒りと苛立ちが渦巻いている。
新たに選挙を行うというタイお決まりの解決方法も、今回はうまくいきそうにない。連立与党を率いるアピシット氏の民主党は当然ながら、自由かつ公正な選挙を行えば、国民が過去3度の選挙と同じように、元首相のタクシン・チナワット氏に忠実な政権を選ぶのではないかと恐れている。
そうして誕生した政権は必然的に、黄色のTシャツを着用し、タクシン氏を毛嫌いする王党派の民主市民連合(PAD)の抵抗に遭うだろう。
タクシン・チナワット元首相は逃亡先のドバイから今回のデモを指揮したとされている〔AFPBB News〕
バンコクで起きた直近の暴動は、国外に亡命したタクシン氏によるテレビを通じた決起の呼びかけに奮起した赤シャツ姿のデモ隊によって先導された。
「反独裁民主戦線(UDD)」と名乗る何万人もの赤シャツ軍団は3週間にわたって、アピシット氏の退陣と、制約なき民主主義の回復を求めて首相官邸を包囲した。
4月8日には、プミポン国王の主席顧問で、2006年のタクシン氏追放クーデターを企てたとされるプレム・ティンスラノン枢密院議長の自宅を取り囲んだ。
その3日後、警備体制の不備を突く格好で、何百人もの非武装UDD支持者が、アジアの首脳陣が集う海沿いのリゾート地に殺到。面目を失ったアピシット氏はサミット中止を余儀なくされた。
翌日、同氏はデモ隊を解散させるため、バンコクに非常事態宣言を発令した。
JBpress特典として、最新号がプレゼントされます。
- 中国と米国と人民元 通貨切り上げを促すには冷静な対応を (2010.03.17)
- 日本の財政赤字:終末の日はまだ先 (2010.03.16)
- ドイツ経済:欧州の原動力 (2010.03.15)
- いよいよ世界に蔓延する模造品 (2010.03.12)
- 財政赤字:誰が勘定を払うのか? (2010.03.10)
- ■Financial Times米国の覇権に挑む中国の実力 (03月17日)
- ■中国検閲強化で激減した中国のネット利用 (03月17日)
- ■The Economist中国と米国と人民元 通貨切り上げを促すには冷静な対応を (03月17日)
- ■地方経済見聞録インドはやはり混沌の国だった (03月17日)
- ■Financial Times会計基準と規制の国際調和はまだ遠い先 (03月17日)


RSS
Twitter
最新記事
最新記事
SHARE
RESIZE
Small Size
Large Size
PRINT
Small Size
Large Size






