休日になるとホームセンターを訪れては花の植木鉢やプランターを買い求め、家の庭いじりに精を出すという人は多いのではないだろうか。

 日本人の趣味としてすっかり定着した「ガーデニング」。現在、日本でガーデニングをたしなむ人は3000万人以上に達するという。植物や土をいじっていると、確かに心が癒やされ、日頃のストレスも忘れられる。

蓼科高原 バラクラ イングリッシュガーデン
〒391-0301
長野県茅野市北山栗平5047

 そうしたガーデニング愛好家にとっての聖地が長野県茅野市にある。その名は「蓼科高原バラクライングリッシュガーデン」(以下、バラクラ)。1990年にオープンした日本初の本格的な英国式庭園だ。約1万平方メートルの敷地に約5000種の植物が植えられた美しい庭である。

 日本で一般的に言われる「ガーデニング」の発祥の地は英国だ。英国には、自然の景観を庭の中に取り入れて、心地よい空間を作り出そうという庭園文化がある。一般家庭においても、庭を四季折々の花や植物で飾り、庭づくりを楽しむ人が大変多い。バラクライングリッシュガーデンは、そうした英国流の庭づくりの文化を日本に持ち込んだ。

オープン当初は誰も訪れてこなかった

 だが、90年にバラクラがオープンした時、「イングリッシュガーデン(英国式庭園)」と言われて、どんな場所なのか思い浮かべられる日本人ほとんどいなかった。実際、当初は来場者がほとんどおらず、なんとも寂寞とした雰囲気だったらしい。

 風向きが変わってくるのは、90年代半ば以降のこと。徐々にガーデニングがブームとなり、「ガーデニング」が流行語大賞となった97年前後から、爆発的にガーデニング人口が増えた。

 その流れとともにバラクラも来場者が増え始めた。今や蓼科の一大観光スポットとして、年間に約20万人が訪れる。花が咲き誇る春、夏ともなると、旅行会社が仕立てたバスに乗って、大勢の観光客がやって来る。

 「ガーデンが最も美しい時期」である6月後半には、最大のイベント「蓼科高原バラクラ・フラワーショー」が開催される。昨年は4日間で約2万人が来場した。今年のフラワーショーでは、JR東日本が新宿駅から茅野駅までの専用直行列車を用意するという。

隅から隅まで「本物」にこだわった

 なぜこれほど多くの人が、バラクラにやって来るようになったのだろうか。まず、バラクラ自身が各地にガーデンショップを展開するなど、自らガーデニングブームを作り、牽引してきたことが大きい。

 また見逃してはならないのが、ここが英国式庭園の単なるイミテーションではなく、隅から隅まで「本物」であることにこだわって作られた点だろう。