11月28日、香港でも抗議デモが行われていた(写真:ロイター/アフロ)

(舛添 要一:国際政治学者)

 11月30日、中国の江沢民元国家主席が死去した。96歳であった。

 1989年6月4日の天安門事件の後、当時の最高指導者鄧小平は、失脚した趙紫陽の後任として、上海市トップの市党委員会書記の座にあった江沢民を抜擢した。

 江沢民は、鄧小平の改革開放路線を踏襲し、経済発展に辣腕を振るい、在位13年間に年平均9%という高度成長を成し遂げた。2002年に党総書記を退任し、2003年には国家主席の座からも降りた。後任は胡錦濤である。

 三期目に入った習近平政権は、毛沢東路線に先祖返りするような形で独裁色を強めているが、その強権的な政策に対して、国民の不満が高まっている。

天安門事件を想起させるデモ

 中国では、政府のゼロコロナ政策に反対する抗議活動が広がっている。私が驚いたことが2点ある。

 第一は、北京、上海、南京、広州など全土で同時に動きがあったことである。これが可能になったのは、SNSの発展がある。当局の監視をくぐり抜けて、デモに参加するように呼びかけたものと思われる。

 第二は、デモに参加した人々から「共産党は退陣せよ! 習近平は退陣せよ!」という声が上がったことである。ここまで厳しい言葉が聞かれるのは、1989年6月4日の天安門事件以来である。