「日本はいずれ消滅するだろう」とツイートしたイーロン・マスク氏(写真:ロイター/アフロ)

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(宮前 耕也:SMBC日興証券 日本担当シニアエコノミスト)

 5月7日、米国の著名経営者のイーロン・マスク氏が、ツイッター上にて、「出生率が死亡率を上回るような変化がない限り、日本はいずれ消滅するだろう」と投稿し、世間の関心を集めた。実際に日本が消滅する可能性はかなり低く、万が一そうなるとしても、それは数世紀先の話だ。ただ、マスク氏の警鐘は人口問題を考え直す契機となろう。

 コロナ禍により、少子化が加速し、かつ外国人の流入が停滞しており、総人口や労働力人口に下押し圧力が掛かっている。特に、先行きは総人口よりも、労働力人口の変化が急となりそうだ。

 総人口を需要、労働力人口を供給と読み替えれば、2020年代までは需要面での成長下押し圧力がテーマになるが、2030年代以降は人手不足が一段と深刻化し、供給面での成長下押し圧力がテーマになろう。

過去最大の減少幅を記録した総人口

 マスク氏が反応したのは、日本の総人口が過去最大の減少幅を記録したとのニュースに対してだ。

 総務省発表の「人口推計」によれば、2021年10月1日時点の総人口は1億2550万人となり、前年より64万人減少した。減少幅は1951年以来で過去最大を記録。前年対比の減少率も▲0.51%と過去最大だ。総人口は2008年の1億2808万人をピークに減少傾向にあり、かつ減少ペースは加速している。

 2020年10月から2021年9月までの1年間における総人口変化の内訳を見ると、日本人人口は62万人減少した。死亡数144万人に対して出生数が83万人にとどまり、差し引き61万人の自然減となった影響が大きい。

 また、外国人人口が3万人減少し、コロナ禍で出国超となった影響が表れている。外国人人口が減少したのは、東日本大震災後の2012年以来9年ぶりだ。

 出生数の減少と死亡数の増加が続けば、近い将来に「消滅」には至らずとも、総人口の減少ペースがますます加速する。では、出生数と死亡数はどのような経路を辿るであろうか。


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