ショッピングセンターを中心に、幅広い世代に愛されるファッションブランドを国内外でチェーン展開するアダストリア。「Play fashion!」をミッションに掲げ、ファッションを通じて顧客一人一人の毎日に「もっと楽しい」選択肢を提案し続ける同社は、顧客とスタッフの「ワクワク」につながるDX戦略を進めてきた。アダストリア流DXの核心について、同社執行役員でありDX戦略部長の櫻井裕也氏が解説する。

※本コンテンツは、2022年3月25日(金)に開催されたJBpress主催「第7回 リテールDXフォーラム」の特別講演Ⅲ「アダストリア流DXのすすめ方~すべてはお客様とスタッフのワクワクのために~」の内容を採録したものです。

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https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/70180

「Play fashion!」のもとに描かれる成長戦略

 株式会社アダストリアは「GLOBAL WORK」や「niko and…」など、30を超えるブランドをグループ全体で約1400店舗展開するカジュアルファッション専門店チェーンだ。1953年に紳士服小売店として創業以来、ビジネスモデルを変革させながら、2023年には70周年を迎える。2014年に自社ECサイトを全面リニューアルしサービスを開始したアダストリアグループ公式Webストア「.st(ドットエスティ)」は1300万人を超える会員を擁し、2022年春には「.st」と実店舗のメリットを融合させたOMO(Online Merges with Offline)型店舗の拡大も予定。アパレルのみならず、ライフスタイル全般に関わる幅広いカテゴリーにおいて、商品展開の拡大に力を注いでいる。

 同社が2年前に策定した成長戦略では、「Play fashion!」というコーポレートミッションのもとに4つの柱が置かれた。

①マルチブランドで顧客の人生に長く寄り添う
②サービスやコトを取り入れ、顧客接点を最大化する
③世界を舞台に各地域と共創した価値を提供する
④新しいライフスタイルを新たな事業とする

 加えて、サステナブルな経営へのチャレンジにも重きを置いている、として、櫻井氏はこう語る。

「成長戦略を進める上で注力領域として捉えているのが、自社ECのリニューアル促進やデジタルの基盤強化です。その一丁目一番地となるのが『.st』だと考えています。アダストリアの2021年2月期における国内EC全売上高は538億円、これに占める自社ECサイトの売上比率は15.9%となりました。かなりの規模に成長してきていることを実感しています。今後、『.st』をどのように進化させていくかが、DX推進の大きなテーマになっています」

 また、従来の枠組みにとどまらない挑戦として、2021年に「アダストリア・ライフスタイル・クリエイション」というBtoBプロデュース事業を本格始動。株式会社西武ライオンズとパートナーシップ契約を締結し、一部のスタッフユニフォームをコーディネートした。さらに「これからはスタートアップ企業との連携が重要」という考えのもと、AR領域のプレティア・テクノロジーズ株式会社や電動マイクロモビリティー領域の株式会社Luupに出資し、「互いにシナジーを生むような取り組み」も始めている。国内だけでなく、海外店舗の拡大など、グローバル展開も進行中だ。