択捉島を視察する当時は首相だったドミトリー・メドベージェフ(2019年8月2日、写真:代表撮影/ロイター/アフロ)

ロシア疲弊が北方領土奪還のチャンス

 ウクライナ侵攻までのウラジーミル・プーチン大統領は生きのいい北極熊ではなかっただろうか。

 しかし、今や深手を負ったクマと化した。理不尽な侵攻で多大の国損をもたらしている大統領を国民はいつまで許すのだろうか。

 プーチンは西側諸国の金融・経済制裁は全く影響を与えていないかのように語っている。しかし、家計を預かる主婦たちからは、物価の値上がりで困惑している声が聞こえてくる。

 金回りが悪くなって各種企業などの経営が行き詰まり、失業者が増えてくれば、暢気なことは言っておれなくなるに違いない。

 国民から怨嗟の声がふつふつと上がり、大統領を追い落とす動きも出てくるだろう。

 しかし、権力をなくしたら地獄が待っていると知っているプーチンがすんなりと椅子を明け渡すとは思えない。一波乱があるかもしれない。

 いま日本が注目すべきは、プーチンの運命ではない。

 ロシアの疲弊と北方領土を抱えておけない状況の到来である。その好機を見逃がしてはならない。

ロシアの経済的困窮

 ロシアが2月24日にウクライナ侵攻を開始して以降の戦費を試算した欧州の調査研究機関は、3月上旬、人的被害の影響なども含めて1日当たりのコストが200億ドル(約2兆5000億円)超になるとはじき出した。

 米国の経済紙フォーブスは、3月中旬時点でウクライナ軍の情報に基づく兵器の損失額について、約51億ドル(約6400億円)と報じた。

 ロシアのショイグ国防相は3月25日にルシアノフ財務相と軍予算の増額について協議したとされる。

 ストックホルム国際平和研究所によると、ロシアの2020年の軍事費は約617億ドル、軍事費の国内総生産(GDP)に占める比率は4.3%で、米英に比しても高かった。