2019年7月28日、ロシア海軍創設323年を記念した式典に参加したプーチン大統領(写真:ロイター/アフロ)

(在ロンドン国際ジャーナリスト・木村正人)

[ロンドン発]「鶏を殺して猿を脅す(殺鶏嚇猴)」という中国の諺がある。ロシア軍のウクライナ侵攻でウラジーミル・プーチン大統領の横暴を許せば、中国も台湾に武力侵攻しかねないという懸念が西側にはくすぶる。

 ここはしっかりウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領を軍民両面で支援し、前例のない経済制裁でプーチン氏を破滅に追いやれば中国の習近平国家主席も肝を冷やすに違いない。そんな深謀遠慮が西側にはある。

「ロシアを助けるとどうなるか分かっているか」

 ジョー・バイデン米大統領は3月24日、ブリュッセルの北大西洋条約機構(NATO)本部で記者会見し「習氏と6~7日前に電話で話した際、脅しこそしなかったが、ロシアを助けるとどうなるか分かっているか確認した。中国は自国の経済的な未来がロシアよりも西側と密接に結びついていることを理解している。だから習氏が関わらないことを望んでいる」と、旧知の習氏を牽制した。

 首脳会議を開いたNATOの30カ国首脳も「中国を含むすべての国家に対し、国連憲章に謳われている主権と領土保全の原則を含む国際秩序を維持し、ロシアの戦争努力をいかなる形でも支援せず、ロシアの制裁回避を助ける行動も控えるよう要請する。中国政府高官の最近の公的発言を懸念しており、中国に対し、特に戦争とNATOに関するクレムリンの誤ったシナリオを増幅することを止め、紛争の平和的解決を促進するよう求める」と警告した。

 国連総会(193カ国)は24日、緊急特別会合で「ウクライナで深刻化する人道危機はロシアによる敵対行為の悲惨な結果」と表明し、即時停戦と数百万人の市民、住宅、学校、病院の保護を求める人道決議案を賛成140カ国で採択した。反対はロシア、ベラルーシ、シリア、北朝鮮など5カ国。中国やインド、南アフリカ、イランは棄権した。3月2日の敵対行為の即時停止とロシア軍の撤退を求める国連総会のロシア非難決議案も中国は棄権した。