ロボット学院での技術実習風景(筆者友人が2019年に撮影)

(加藤勇樹:香港企業Find Asia 企業コンサルタント)

 近年、就職・転職先として中国で人気の業種と言えば、テック業界と教育業界です。ところが、この二つの業界に陰りが見え始めています。一方製造業は国家として力を入れようとしている一方であまり人気がありません。何度も転職することも一般的で、人材の流動性が高い中国ですが、今後人材はどこへ向かうのか。最新の中国転職・就職事情をお伝えします。

高い転職率を支えた2業界の成長

 中国における旧正月(春節)である2月が近づいてきました。この時期は、転職が多いことでも知られています。大手求人広告会社「猎聘网」(https://www.liepin.com/)によると転職者の4割が旧正月前後の1カ月に集中しています。

 日本に比べると、中国は転職率が高いのですが、その要因の1つは、経済成長が続くなかで強気の転職者たちがいることです。2018年以降、中国の年平均昇給率は6%にまで落ち着いてきていますが、よりよい待遇を実現するために転職によって昇給を目指すことは一般的になっています。

「猎聘网」などによると、25歳以下の1社あたりの平均在職期間は0.8年(10カ月)です。社会人経験3年目にして3社を経験した、という人も少なくない、ということです。

 こういった転職の多くはテック企業の開発職などです。以前「996(朝9時夜9時週6日勤務)」がテック企業で恒常化していることをご紹介しました(「中国で急拡大する「職業掛け持ち」の実態とは」、https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/62813)。このような企業が、競争力の維持や人手不足のため常時人材採用を行ってきたことが、転職市場を加熱させてきた要因といえるでしょう。

 また、教育業界も近年急成長を遂げてきました。中国で成長してきたこの2業界(テック業界、教育業界)は人気のある業界であり、成長に伴い多くの人材を引き寄せてきた産業です。両業界の成長が流動性の高い人材採用市場を形作ってきたのです。

 ところが、2021年からこの2業界に対する市場規制が進み始めました。

 Forbes China(福布斯中国)の記事「互联网“冰火两重天”:一边裁员,一边“福利内卷”」(2021年12月、https://new.qq.com/omn/20211224/20211224A079L000.html)によると、大手テック企業のテンセントはグループ内の中核部門、Platform and Content事業部社員30%に対するリストラを敢行しました。またTikTokを運営するByteDance社は重要拠点である温州拠点の全閉鎖、大手動画サービスIqiyi(愛奇藝)では40%のリストラを実行しています。