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 パナソニックが中国の家電大手TCLにテレビの生産委託を決めた。自社生産は上位機種だけとなり、大半の機種は外部企業が生産する。同社は白物家電についても合理化を進めており、生産をベトナムに集約化している。日本メーカーによる生産拠点の海外シフトは今に始まったことではないが、モノ作りの代表格のひとつだったテレビの海外シフトによって、製造業からの脱却がさらに進むことになる。(加谷 珪一:経済評論家)

日本メーカーはもはや商社のようなビジネスになった

 パナソニックは洗濯機や冷蔵庫など白物家電を得意とするメーカーだったが、その後、テレビやビデオなどAV機器の事業を拡大、ソニーと人気を二分していた。2000年代にはテレビ薄型化の流れに伴い、プラズマディスプレイに巨額投資を行ったものの、液晶パネルの躍進によって、同社のテレビ事業は縮小に転じた。一方、韓国サムスンやLG、中国TCLなど後発メーカーは2000年代後半から一気にシェアを拡大し、2010年代に入るとパナソニックは市場での存在感を急速に失っていった。

 今回、同社が中国TCLに生産を委託するのは大半の低価格機種で、自社生産を行うのはごく一部の上位機種となる。加えて各国の生産拠点からの撤退も進んでおり、最終的にはマレーシアと台湾のみになる。国内唯一の拠点だった宇都宮工場(栃木県)も有機ELの生産に限定される見通しだ。メーカーとしては相応のラインナップが必要であることから、生産委託という形で販売を続けるが、収益という点ではほとんど貢献しないだろう。

 白物家電についてはすでに事業の整理が進んでおり、三洋電機を子会社化したのち、同社の白物家電部門は中国のハイアールに売却。パナソニック本体についても、タイなど海外への生産拠点の移管を進めてきた。だが中国企業とのコスト競争がさらに激しくなったことから、タイでの生産からも撤退しており、さらにコストの安いベトナムへの集約を進めている。