買春容疑で逮捕された李雲迪(ユンディ・リ)。写真は2013年1月撮影のもの(写真:アフロ)

 日本時間の10月21日、遠くポーランドの首都ワルシャワから届いた「吉報」に、日本が沸いた。「ピアノ界のオリンピック」こと5年に一度のショパン・コンクールで、反田恭平君(27歳)が2位、小林愛実さん(26歳)が4位と、日本の若きピアニストがW受賞したのだ。ピアノが唯一の趣味である私も、10月2日の第一次予選から始まって、二次予選、三次予選、ファイナルとインターネットで見続け、疲労困憊だったが、反田君がファイナルで弾いた40分のコンチェルト1番が圧巻で、いっぺんに疲れが吹き飛んでしまった。

 というのは前振りで、同じショパン・コンクールにまつわる隣国の話である。日本が「吉報」に沸いた同日に、中国では「凶報」が舞い込み、大騒ぎになった。2000年のショパン・コンクールで優勝し、シンデレラボーイとなった「ピアノ王子」こと李雲迪(ユンディ・リ 39歳)が、北京の警察に、買春容疑で逮捕されたというのだ。日本でも「ピアノ界のキムタク」と呼ばれ、コンサートは常に満席だったから、顔を見れば「あの人か」と思う方も多いだろう。

伏字で発表もネット上で即座に本人特定

 北京市朝陽区警察は同日、次のように発表した。

<近く、朝陽公安局に通報が入り、ある人物が同区の一角で買春行為を行っているという。この通報を受けて警察が捜査に乗り出したところ、違法な売春行為を行っていた女性は、陳〇卉(29歳)で、違法な買春行為を行っていた男性は、李〇迪(39歳)と判明した。捜査の過程で、二人は容疑の事実を認めた。現在、法に基づいて朝陽公安分局に二人の身柄を拘留中である>

 警察が公開したのは以上である。実名の一部は伏字になっていたのだが、瞬く間に「買春で捕まったのは李雲迪らしい」「よりによってショパン・コンクールの優勝者発表の日に捕まるなんて」といった書き込みが、ネットやSNS上に拡散したのだった。翌22日からは、中国メディアが一斉に、実名で「著名ピアニストの犯罪」を報じ始めた。