日本を叩き潰す道具となったBIS規制が回り回って米国経済を大きく蝕んできた

 我々は「世界」から逃れようがない。遠いと思っている「世界」は、あなたの家の玄関に来ている。気が付かないだけだ。

 ジリアン・テットをご存知だろうか?

 2000年頃、私がゴールドマンサックスのパートナーを務めていた頃、当時フィナンシャルタイムズ(FT)東京支局長のジリアン・テットと、バブル崩壊後の日本について議論したことがある。

 金融政策の失敗、リアルと金融のダブルの下向きスパイラルが10年は続いていくこと、その間に少子高齢化の影響がデフレ効果をもたらすこと、すでに大企業は中国に脱出を開始していること、もしかすると、戦後の英国のような30年の長期の低迷に突入しているかもしれないこと、などを2人で話した。彼女の日本に懐疑的な論点は正確だった。

 9月22日の日本経済新聞に「世界の債務膨張 議論を」と題したFTのジリアン・テットの論説が掲載されていた。

(編集部注:JBpressのFT翻訳記事でお読みいただけます。「急激に膨れ上がる世界の債務」https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/67008

 歴史的かつ世界的な視点での論考であり、読むべきである。

米国債は史上最悪

 コロナ禍で米国政府の債務は膨張し、米国債の対GDP(国内総生産)比率は、第2次世界大戦直後を上回り、史上最高である。

 なぜ、ここまで米国債の膨張は受け入れられてきたのだろうか。いや、米国だけでなく、EUでも日本でも国債の膨張が受け入れられてきた。なぜだろうか?

 もっと言えば、日本では顕著だが、なぜ国の借金である国債ばかりが増え、「成長資金」であるはずの企業への貸付が増えないのだろうか?