東京五輪の女子体操平均台で銅メダルを獲得した米国のシモーネ・バイルズ選手(8月3日、写真:新華社/アフロ)

上院司法委で体操の女王たちが証言

 米体操選手団は東京五輪で、「強敵」中国には2個少なかったものの、金銀銅合計6個メダルを取って善戦した。米オリンピック・パラリンピック委員会(USOPC)も全米体操連盟(USAG)もほっとしたに違いない。

 だが新型コロナウイルス感染症で1年延期後に開催された東京五輪の最中、USOPCもUSAGも針の筵(むしろ)に座らされている思いだった。

 東京五輪閉会から5週間後、パラリンピック閉幕から10日後の9月15日、上院司法委員会(ディック・ダービン委員長=民主、イリノイ州選出)は、過去12年間、女子体操選手に対する婦女暴行・虐待事件を取り上げ、追及する聴聞会を開いた。

 米体操のスーパースター、シモーネ・バイルズさん(24)をはじめ、リオ五輪で金メダル4冠に輝いたアリー・レイズマンさん(27)、ロンドン五輪の跳馬で銅メダルを取ったマッケイラ・マロニーさん(25)らが証言に立った。

 この婦女暴行事件とは、USOPCの女子体操チームの専属整体専門医だったラリー・ナッサー服役囚(58=レバノン系米国人)が2009年から2015年の7年間、265人の女子選手に性的虐待・暴行を加えた米スポーツ界史上最大のスキャンダルだ。

 被害に遭ったのは五輪代表選手を含むティーンエージャーや20代の女性たちだった。

 ナッサーは、当時ミシガン州立大学医学部教授だった。高校や大学の女子体操部のコーチやトレーナーを歴任した後、USAG、USOPCの整体専門医を務めた。

 2017年7月、児童ポルノ法違反で罪状を認め、60年の禁固刑を宣言された。同年11月には7件の第1級性的暴行、また12月にはさらに別の3件の性的暴行を認めた。

 州裁判所、連邦地裁などから相次いで実刑判決を受け、禁固刑は合わせて300年、最終的には無期懲役となった。

 司法委員会で証言したマロニーさんは、13歳の時に性的虐待を受けて以後、20歳で引退するまで7年間も性的暴行を加えられた。