ノーベル平和賞を受賞している韓国だが、科学系のノーベル賞の受賞はまだ実現していない(写真:代表撮影/ロイター/アフロ)

 とある韓国の地方都市で中学3年生の息子を育てる日本人の筆者。子供の成長を温かく見守りながら、近いようで遠い日韓の相違を軽快な筆致で鋭く描くコラム。今回は、憧れのユーチューバーに一歩近づいた息子と、それに嫉妬する友人を取り巻く物語。

(立花 志音:在韓ライター)

 韓国は学歴社会であり、また熾烈な競争社会である。大学と、それに準ずる高等教育機関への進学率は7割に上り、少しでも上ランクの大学に行くだけのために、子供の頃からひたすら勉強している。

 筆者の息子も例外にもれず、勉強しないと韓国では生き残れないとひたすら勉強してきたが、ある時、中学生ユーチューバーの「ゆたぼん」の存在を知った。息子は不登校に賛成はしないが、自由なゆたぼんに共鳴し、やみくもに勉強する毎日を少しずつ変えようとしていた。

【参考記事】
あの「ゆたぼん」に憧れる韓国人中学生とがんじがらめの学生生活(https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/65397)

 今年の夏休みは、日本語で漫画『ハイキュー!!』を読み、英語で児童用『ハリーポッター』を読み、そしてオンラインゲームの動画編集を始めた。毎日塾に通いながらも、コロナ禍の中学最後の夏休みを楽しんでいた。

 韓国では高校受験がなくなったので、自由な時間は高校入学前の夏休みしかない。高校受験がないのは、「高校標準化制度」という政策が推進されてきたため。一言でいうと、進学先の高校を抽選で決めるという制度だ。

 貧富の差やコネによる不平等を解消する目的で始まった政策だが、大学受験の際に親の財力や人脈が大いに影響するため、無意味化した過去の政策だと韓国でも認識されている。

 そんな夏休みも終盤というある日の早朝、「おかあさん!!バズったよ!!」という息子の声で起こされた。息子のYouTube動画の再生回数が、一晩で6万回を超えたのだそうだ。

 ユーチューバーといえば、日本では「ゆたぼん」が色々と世間を騒がしているが、同年代の息子としてこちらの事情は少し違う。息子が公開した動画は、対戦型オンラインゲームの中で自分がカッコよく敵を倒した様子を録画編集したものだった。