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(平井 敏晴:韓国・漢陽女子大学助教授)

 日本には「天皇」がいて、羨ましいですよ。──筆者が住む韓国・ソウルで行きつけにしているコーヒーショップのオーナーが、ある日、突然こう言い出した。

 我が家で愛用していた正田醤油(群馬県館林市にある老舗メーカーの醤油)が底を尽きつつあり、コロナのせいで一時帰国が叶わず醤油をどうしようかと頭を抱えていたその折に、何とも言えないタイミングで切り出されたのだ。ふと、上皇后様のお姿が脳裏に浮かんだ。

なぜ「羨ましい」のか?

 このオーナーは日本の喫茶店を何軒か訪ねるうちにコーヒーに目覚め、その後、関西でコーヒー修行をしたという経歴の持ち主だ。サイフォンで淹れたコーヒーも飲めるので、どんなに忙しくても週に2度は彼の店を訪ねている。

 彼が日本に住んでいたということもあり、今では世間話をする仲だ。ただ、「天皇」を羨望する発言を聞くのは、コーヒーをゆっくり飲みたい私にとって、気が気でなかった。彼はもともと声が大きいのだが、普段に増しての大声でこの話をするのだ。