国内の医療供給はかつて経験したことないほどひっ迫している(写真:ロイター/アフロ)

(真鍋雅史・嘉悦大学教授)

*本稿は、「パンデミックと日本社会」研究プロジェクトの研究成果の一部である。プロジェクトメンバーは、竹中平蔵(慶應義塾大学名誉教授)、真鍋雅史(嘉悦大学)、浅野竜一(株式会社ZOAS)、鈴木崇弘(城西国際大学)、土屋貴裕(京都先端科学大学)、跡田直澄(京都先端科学大学教授)である。また、本稿の作成にあたっては多くの方々から助言を得ている。記して感謝したい。

「感染者数はG7最小、病床数はG7最大」なのになぜ「医療崩壊」したか

 2019年末に中国湖北省武漢市で発生が確認された新型コロナウイルス感染症(COVID-19)は、1年半以上経過した現在においても、依然として、世界中に多大な損害を与えている。未だ「終息」とはいえない状況の中で、ワクチン接種の推進、治療薬の開発や承認、あるいは感染予防対策の継続など、目の前の感染状況に対して求められていることは少なくない。

 しかしながら、仮にこのCOVID-19との戦いに勝利をしたとしても、国際的な交流が深化拡大する現代において、再びパンデミックが発生することは間違いない。しかも、次のパンデミックは、いつ発生するかわからない。極端にいえば、明日にでも、あるいは同時多発的に発生するかもしれないのである。

 ならば、次のパンデミックに備えて、私たちは、今回のCOVID-19対応から何を学び、社会をどう変革させていくべきか。このような問題意識のもと、我々は「パンデミックと日本社会」研究プロジェクトを立ち上げ、検証を進めてきている。

 その中で我々の最大の問題意識は「我が国で、なぜ医療が崩壊したのか」という点である。図1は、人口1000人当たりの新規感染者数7日平均の国際比較である。医療への負荷を議論するという観点から、その最大値で比較している。日本の感染者数はG7最少であり、イギリスの約5分の1の水準である。図2は、人口1000人当たりの病床数である。病床数はG7の中でも圧倒的に多く、イギリスの5倍以上の水準である。そうであるにもかかわらず、病床がひっ迫し医療が崩壊したのはなぜなのか。なぜそれほど医療は脆弱だったのだろうか。

【図1】新規感染者数の国際比較(人口1000人当たり、7日間平均最大数)
出所)Johns Hopkins University Corona Virus Resource Center
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【図2】病床数の国際比較(人口1000人当たり)
出所)OECD Health Stat
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