6月5日、ミャンマーのマンダレーで軍政に反対する市民がASEANの旗を燃やして抗議の意を示す。ミャンマーでは民主政を求める市民の間で、軍政を正規の政権として遇するASEANに反発が強まっている(写真:ロイター/アフロ)

 クーデターで政権を奪取して既成事実を次々と積み上げているミャンマーの軍政。これに対し、西側諸国は経済制裁や非難決議などで対応を模索しているが、まだ実効的な効果を生み出すまでには至っていない。

 そうした中で最初に大きな動きを見せたのがミャンマーも加盟国となっている東南アジア諸国連合(ASEAN)だった。4月に臨時首脳会議を開催し、ここにミャンマー軍政のトップであるミン・アウン・フライン国軍司令官を参加させたのだ。そこでASEAN各国首脳、外相らとの直接会談を実現させ、「即時暴力行為の停止」「人道支援の提供」などを内容とする5項目の合意に漕ぎつけた。

 ASEANが域内組織としての強みを見せ、混迷するミャンマー情勢に大きな一歩を印したかにみえたのだが、その後の展開はといえば、ミャンマー軍政にペースを握られ、遅々として進まぬ膠着状態に陥っている。

 一方で軍制は次々と既成事実を積み上げて、「政権」の正当性を内外にアピールしている。

 さらにASEANによるミャンマー問題の平和的解決への仲介が行き詰まる中、ASEANへの接近を図っているのが中国だ。ASEANとの関係強化のためにミャンマー問題でその存在感を示そうとする中国の動きには、習近平国家主席が独自に描く「一帯一路」構想への思惑も見え隠れする。そのためASEAN各国には中国のミャンマー問題への関与を歓迎する一方で「警戒感」も生まれている。

 出口の見えないミャンマー問題に欧米、国連、ASEAN、中国といった「プレイヤー」がそれぞれの意図をもって参入しようとしている現状を伝える。

軍政トップ、ASEAN首脳会議にミャンマー「首脳」として参加

 4月24日にインドネシアの首都ジャカルタで開催されたASEAN臨時首脳会議に正式に参加したミャンマーのミン・アウン・フライン国軍司令官は、他の参加国から「首脳」として遇された。

4月24日、ミャンマー問題を話し合うASEAN臨時首脳会議に出席するため、インドネシアのジャカルタを訪れたミャンマー軍政トップのミン・アウン・フライン総司令官(提供:Indonesian Presidential Secreteriat/Abaca/アフロ)

 ミャンマー軍政は、このことをもって「ASEANで自らの公的な立場が認められた」と理解し、歓迎した。