(英エコノミスト誌 2021年4月17日号)

環境に優しくないからといって石油会社を認めなければ私たちの生活は成り立たない

米国で企業と政治が接近している。懸念すべき影響もある。

 米国人は、外国で企業と政治が交わっている様子に気づくと、制度上の腐敗や縁故資本主義、あるいは権威主義の兆候ではないかと考えることが多い。

 ところが今日、ほかならぬ米国で政府と企業の交わりが生じている。

 時には、ジョージア州などで新たに成立した選挙の投票を制限する州法に最高経営責任者(CEO)たちが抗議したケースなど、立派な主義・主張のために行われる場合もある。

 また時には、高潔な政治家のようなCEOが登場する場合もある。米JPモルガン・チェースのジェイミー・ダイモンCEOが打ち出した最新の指針は、軍需品の調達や刑事裁判をはじめとする重いテーマについて意見を述べている。

 そのような意見表明が最も広範に見られた例としては、経営者団体のビジネス・ラウンドテーブルが企業と地域社会、そして国家の成功のために企業の責任が及ぶ範囲を拡大し、すべてのステークホルダー(利害関係者)に仕えると明言したことが挙げられる。

国家と企業の関係

 本誌エコノミストは、投票権を守ることを強く支持する。競争的な市場で事業を展開している企業は社会の進歩を推進していると考えている。

 それでも、古典的な自由主義者として、権力の集中は危険だとも考える。

 ビジネスに携わる人々は常に自分の利益のためにロビー活動を展開するが、彼らが政府に接近すればするほど、経済と政治の両方に及ぼしかねない害も大きくなる。

 有限責任会社が国家から特許状を得なければならない制度を廃止することで、19世紀にビジネスと政治家の分離を最初に行ったのは米国だった。

 このイノベーションは保護とは正反対の意味を持っており、米国を富ませることに寄与した。

 国家と企業の関係は、19世紀の「金ぴか時代」の野心と汚職から1945年以降のコーポラティズムに至るまでまさに波瀾万丈で、いまだに落ち着いていない。

 ここ数十年で主流になった考え方は、20世紀の経済学者ミルトン・フリードマンに依拠したものだ。

 すなわち、企業経営者の権限は企業の所有者に由来する、経営者は所有者の利益を優先すべきであり、長期的な利益の最大化が所有者の利益になるのが普通である、という考え方だ。

 この理想を実現した企業はほとんど存在しなかったが、今日の企業はいろいろな圧力のために、この理想をおおっぴらに拒絶している。