絶妙なタイミングで日米韓に揺さぶりをかける北朝鮮の金正恩総書記(写真:AP/アフロ)

 北朝鮮がコロナ禍に対する危険性を理由に東京オリンピックへの不参加を表明した。日本のメディアは、日朝関係や米朝関係など不参加に至った理由や今後の見通しについてあれこれ解説している。確かに、台湾海峡波高しという状況において、北朝鮮の動きは米中の東アジア戦略に大きな変化を与えかねない面がある。

 ただ、日本が勇ましく戦争のリスクなどを語ってみても、憲法9条を持つ国ができることは調査活動や威嚇射撃程度だ。岸防衛相が何を話そうが、専門家と言われる人がどう北朝鮮の軍事力を説明しようが、日本が戦争をできない国である以上、ただの国民向けの情報発信に過ぎない。

 それよりも、注意すべきは北朝鮮の五輪不参加を受けて世界の他の国々が不参加を表明するリスクである。

 先日、筆者のところに、カリフォルニア在住の米国人感染症学者からメモが送られてきた。そのメモによれば、日本のコロナ禍は欧米に比べれば桁違いに小さい問題だが、東アジアを中心としたコロナの影響が少ない国と比較すると最も状況が悪いため、「日本はコロナ対応に失敗している」という判断ができるという。つまり、北朝鮮がコロナ禍を理由に不参加を決めたことには妥当性があるということだ。

 ただ、北朝鮮が五輪不参加を決めたのは、もちろんコロナ禍だけが理由ではない。後述するが、北朝鮮の主張は詭弁であり、五輪の政治利用以外の何物でもない。