サウジアラビア西部ジッダにある国営石油会社サウジアラムコの石油タンク(2021年3月21日、写真:AP/アフロ)

(藤 和彦:経済産業研究所コンサルティング・フェロー)

 米WTI原油先物価格は再び1バレル=60ドル割れとなっている。

 OPECとロシアなどの大産油国で構成される「OPECプラス」が4月1日、市場の予想を覆す決定を行ったからである。

 OPECプラスは、協調減産の規模を5月と6月はそれぞれ日量35万バレル、7月は同44万バレル縮小することを表明した。独自の追加減産(日量100万バレル)を実施していたサウジアラビアもその規模を5月に25万バレル、6月に35万バレル、7月に40万バレルと縮小する方針である。これにより7月までに日量200万バレル以上の原油が増産されることになるが、その規模は世界の原油供給量の2%以上に相当する。

米国がサウジアラビアに増産要求か

 市場関係者の間では「OPECプラスとサウジアラビアは現行の減産規模を据え置く」との見方が多かった。OPECは事前の予測で「新型コロナウイルスのパンデミックの影響で世界の原油需要は下振れする」との見通しを示していたからである。

 今年に入り世界の原油市場は「強気モード」が支配的になりつつあった。「新たな商品のスーパーサイクル(価格の長期的上昇)が始まる」との威勢の良い声が聞かれたが、欧州地域での新型コロナウイルスの感染拡大などから3月中旬に腰折れとなった(1バレル=60ドル割れ)。その後、日量174万バレル(世界の原油供給量の2%弱)が通過するスエズ運河でのタンカー座礁事故を材料に原油価格は反転し、その流れをOPECプラスの協調減産などが後押ししてきた。

 OPECプラスのメンバーの大半は協調減産の規模を維持する方針を支持していたが、OPECの事実上の盟主であるサウジアラビアが供給増の提案を行ったことで議論の流れは変わった。