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(吉田 典史:ジャーナリスト)

 2018年前後から大卒、大学院卒の初任給の改革が進んでいる。くら寿司、ファーストリテイリング(ユニクロ)、LINE、サイバーエージェントなど有力企業が、新卒社員の初任給を一律とせず額に幅を持たせる試みを行っている。

 2021年3月には、大和証券が新入社員の初任給を月額40万円以上(30時間分の固定残業代を含む)にする人事制度を始めることを発表した。自社の資金で株や債券を運用する自己売買部門のトレーダーや、IT分野に携わる人材を想定して設ける「高度専門職」が対象。2022年4月入社から適用する(2021年3月16日、朝日新聞)。

 1960年代前後から、日本の大企業や中堅企業の新卒採用は総合職として全員を一律同額に雇うケースが多かった。その意味で初任給改革は新しい施策であり、野心的な試みとも言える。

 なぜ各社は初任給改革を行っているのか。その背景を探るために2人の識者に取材を試みた。金融ヘッドハンターの田頭信博氏と、人事コンサルタントで明治大学大学院グローバル・ビジネス研究科客員教授の林明文氏である。

田頭信博氏
三光汽船に18年間勤務、うち3年間はシンガポール首席駐在員。その後、1989年からは金融専門のヘッドハンターとして活躍。これまでに国内の大手銀行や証券会社、格付会社、生保、海外の金融機関の社員を中心に850人以上の転職、就職支援に関わってきた。現在、国際金融専門のサーチ会社・エシアリンクコンサルティング代表取締役を務める。