高校球児の夢舞台・阪神甲子園球場(写真:アフロ)

 球児たちの夢舞台で大きな論争が巻き起こっている。

「第93回選抜高等学校野球大会」(通称「センバツ」、主催:毎日新聞社、日本高校野球連盟)5日目の3月24日、第2試合で組まれた柴田(宮城)―京都国際(京都)の一戦は選手たちのプレーよりも京都国際の校歌に注目が集まった。

 京都国際は韓国系学校が発祥で創立の1947年以来、韓国語の校歌を生徒たちが一貫して歌い続けている。外国人系の民族学校をルーツとする学校としては史上初めて高野連への加盟が認められた後、全国でも激戦区の近畿地区高等学校野球大会で昨秋ベスト4の好成績を残したことが大きく評価され、センバツ出場校に選出。このような背景から今大会はさまざまな苦難の道を乗り越え、出場に至ったセンバツの夢舞台となった。

校歌斉唱の生中継ではハングルの歌詞と日本語訳が表示

 そして、この日の1回戦では延長10回の熱戦を制して歴史的勝利をつかんだことで、同校の韓国語校歌が1回裏終了後のイニング間と試合終了後の計2度にわたって甲子園の場内スピーカーから響き渡った。

 最もハレーションが大きかったのは同校校歌の冒頭で歌われている「東海(トンヘ)」である。これは日本海の韓国呼称のため、同校が選抜出場を決めた直後から関係者の間で物議を醸していた。それもあってNHKと毎日放送の大会生中継の映像ではハングルと日本語訳の歌詞が同時に表示され「日本語訳は学校から提出されたものです」との注釈とともに問題視されていた冒頭の「東海」も「東の海」に修正されていた。

 昨今の日韓関係は「史上最悪」とささやかれるまでに冷え込んでいる。そうした中、同校の関係者やOBからは「この歴史的勝利が日本、そして韓国の関係改善につながる一歩になってほしい」との声も多数聞かれた。この日、甲子園のスタンドには同校を応援するため京都だけでなく大阪、兵庫、東京など全国各地から約1000人の在日韓国人が来場したという。