昨年12月31日、中国人民政治協商会議全国委員会の信念の茶話会に出席した党と国家の指導者たち。前から習近平、李克強、栗戦書、汪洋、王滬寧、趙楽際、韓正、王岐山の各氏(写真:新華社/アフロ)

 中国で、3月5日に北京の人民大会堂で開幕する年に一度の国会、全国人民代表大会を前に、習近平主席が「締め付け」を強化している。

 2月25日、同じ人民大会堂で、「全国脱貧困攻略総括表彰大会」を開催。7月に中国共産党創建100周年を控えた習近平政権が、100周年の「看板政策」にしていた「脱貧困」(貧困人口ゼロ)を達成したことを、内外に宣布する自画自賛イベントだった。そこで習主席は、1時間以上にわたって熱弁を振るい、「中国の歴代のどの政権も成し得なかった『脱貧困』を、社会主義のわが共産党政権が成し遂げた」と豪語した。

 翌2月26日、習主席は中南海(最高幹部の職住地)で中央政治局会議を招集。ここでも長い演説をぶち、「中国の特色ある社会主義の偉大なる御旗を掲げて、全国人民代表大会で『第14次5カ年計画」(2021年~2025年)と『2035年までの遠景目標』を定めていく」と力説した。また、学校で「習近平思想」(習近平新時代の中国の特色ある社会主義思想)を、広く教育していくことも、全国人民代表大会で決議することを説いた。

 習近平主席は社会主義の信奉者で、ガチガチの社会主義国家を目指している。中国は、まるで毛沢東時代に逆戻りしていくかのようである。

習近平を中心とする「社会主義重視派」と李克強を中心とする「市場経済重視派」

 だが、1992年から翌年にかけて、毛沢東時代の行き過ぎた社会主義を否定した鄧小平氏らは、「社会主義市場経済」を国是に定めた。社会主義を強め過ぎると経済が停滞するとして、経済分野は市場経済を伸ばしていくと決めたのだ。憲法第15条には、「国家は社会主義市場経済を実行する」と明記されている。

 こうした鄧小平理論をいまに継承するのが、「団派」(中国共産主義青年団出身者)と呼ばれる系譜の政治家たちで、その筆頭は、序列ナンバー2の李克強首相である。2013年3月に、習近平国家主席・李克強首相体制が出帆して以降、毎年3月の全国人民代表大会が近くなると、習近平主席を中心とした「社会主義重視派」と、李克強首相を中心にした「市場経済重視派」の論争が起こってきた。