カンボジアの首都、プノンペンの王宮(Pixabay)

 連載「ポストコロナのIT・未来予想図」の第24回。デジタル技術革新は、新興国や途上国に自らのインフラを世界水準まで急速に引き上げる好機を提供している。元日銀局長の山岡浩巳氏(フューチャー取締役、フューチャー経済・金融研究所長)が、かつて訪れたカンボジアの事例について解説する。

 連載第21回で、バハマが世界で初めて一般利用型中央銀行デジタル通貨の正式発行に至ったことを紹介しました。バハマ同様、ブロックチェーンや分散型台帳技術の利用という点で現在注目を集めている国として、カンボジアも挙げられます。

カンボジアと「ドル化」

 カンボジアには、以前IMF(国際通貨基金)の一員として訪れたことがあります。世界遺産アンコールワットで世界的に有名な国であり、首都プノンペンは、メコン川とトンレサップ川が合流し再び2つに分かれるという、珍しい「X字型」の結節点に位置する美しい街です。

 同時にカンボジアは、ポル・ポト時代の大虐殺など、苦難の歴史を経てきた国でもあります。ポル・ポト政権が貨幣制度そのものの廃止を図るなど、政策混乱の負の遺産が大きいこともあり、これまで独自通貨リエルへの信認を獲得することはなかなか難しかったため、国内で自国通貨に代わり米ドルが広く流通する、「ドル化(Dollarization)」の進んだ国としても知られています。私が訪れた際にも、レストランやカフェでは、メニューは当たり前のように米ドルで値段が記されていました。

「IMFを通じた日本の技術支援活動等に関する年次報告書」(2009年度)より抜粋