連載「ポストコロナのIT・未来予想図」の第22回。デジタル化、IT化の競争とは、「デジタルデータの囲い込み」を巡る競争でもある。このような競争は国内的にも国際的にも加速している。元日銀局長の山岡浩巳氏(フューチャー取締役、フューチャー経済・金融研究所長)が競争の現状と問題点を解説する。

 経済のデジタル・トランスフォーメーション(DX)の成否を左右するのはデジタルデータです。米国の“GAFA”や中国の“BAT”が短時間の間に巨大企業に成長できたのも、データの蓄積による力が大きいと言えます。

 しばしば「21世紀の石油」と言われるデータですが、石油とは異なる特性も持っています。それは、使っても減らないこと、保管に大きな場所を取らないこと、そして、集めれば集めるほど限界効用も大きくなり得ることです。このため、特定の主体にいったんデータが集まり始めると、その主体が強大となり、ますます多くのデータが集積されていきやすいのです。

 さらに、データの量は近年、飛躍的に増えています。人々が日々、スマートフォンを操作し、検索をしたりSNSやネットショッピングを使うたびに、毎秒毎秒、巨大な量のデータが生産されています。例えば、スマートフォンがカメラ機能を搭載して以降、人々が撮影する写真の枚数も急増しているわけです。過去、人類が生み出したデータの9割以上は、最近2年間だけで生産されているとの推計もあるほどです。

 この中で、GAFAやBATのような巨大企業は、今や国境を越えて、巨大な量のデータを蓄積しています。さらに、「データの競争」は「計算力の競争」でもあることを、これらの巨大企業は十分認識しており、今や、これらの企業はクラウドでも巨大プレイヤーになっています。