基礎軍事訓練を受けるソン・フンミン。プレミアリーグのトッテナム・ホットスパーズに所属している(写真:YONHAP NEWS/アフロ)

(朴 車運:ジャーナリスト)

 韓国は現在、世界唯一の分断国家だ。朝鮮戦争後の1953年から北朝鮮と対立しており、正常な韓国人男性は一定期間、軍隊に入隊して服務しなければならない。韓国の兵役は憲法に明示された国民の4大義務の一つで、男性だけに課され、社会的な不正も多い。

 現在、韓国の兵役は、陸軍18カ月、海軍20カ月(海兵隊18カ月)、空軍21カ月で、代替服務対象者は6カ月から36カ月となっている。陸軍を除く海軍と海兵隊、空軍は志願制で、1年6カ月以上収監された受刑者は除外される。

 服務を終えた後も韓国人男性の兵役は続く。除隊後8年間は予備軍として1年に1度の軍事訓練を受けなければならず、その後も40歳まで民防衛隊に組み込まれて、災害への備えや戦争時の地域防衛任務を担う。民防衛隊ははじめの4年は1年間に4時間、以後40歳まで年1時間の教育が義務付けられる。

 筆者の軍服務は1990年代末に始まった。陸軍に26カ月間服務し、多様な経験をした。筆者が軍に服務したのは、金大中(キム・デジュン)大統領の時代で北朝鮮との関係が急速によくなった時である。むろん、表面的にそう見えただけで、実際の韓半島の緊張状態に大きな変わりはなかった。現在の状況はかなり異なるだろうが、軍隊内の人権問題とほぼ無報酬に近い若者の時間の浪費は依然として変わらない。

 筆者は20歳で入営令状を受けたが、一度延期した後、21歳で陸軍に入隊した。韓国の男性にとって軍隊は一種の通過儀礼といえる。良く言えば、団体生活を通して忍耐と社会生活を学ぶ場所だが、悪く言えば、自由が制限されたあらゆる不正に満ちた場所である。

 事実、この期間は、不完全な補償だけが提供される国家の奴隷として時間を過ごす。以前の韓国では、軍隊を正常に終えた人は公務員試験を受ける際に若干の加算点が与えられ、将校や副士官として軍服務を終えると企業の入社試験で優遇されたが、2000年代以降は加算点や優遇制度はほとんどなくなった。女性団体の抗議のためだ。

 韓国陸軍の徴兵は、大きく2つに分けられる。論山(ノンサン)にある陸軍訓練所への入隊と各地域の補充隊(江原道春川と京畿道議政府、その他後方地域)を経て師団が運営する新兵教育隊への入隊だ。