アマゾンの湿った空気とカリブ海の風がぶつかるベネズエラのカナイマ国立公園は一年中、霧に覆われたエリアである。コナン・ドイルの『ロスト・ワールド』で紹介されたギアナ高地はテーブル状の岩山の上に木が生い茂る、巨大な軍艦のような地形で、垂直に伸びた山の勾配は標高差1000メートルに達する。

ベネズエラのカナイマ国立公園
今ここ!

 その風景は、世界中でここでしか見られない壮観なものだ。

 この辺りの地形は20億年前のものと言われ、地球上で最も古い岩石で形成されているらしい。かつて地球上の大陸は1つであったが、この地を中心とした回転軸で2億5000万年前に大陸の分裂が始まったという。

 この地に立つと、人間の信奉する神が存在するはるか以前から大いなるものが存在し、ダイナミックな地球の活動を司っていたことを感じるのだ。動植物、昆虫、進化するもの、とどまるもの、様々なものが共生、共存し、世界の秩序が連綿と続いてきたことを思い知らされる。

 人間が想像し得る尺度をはるかに超えた森羅万象とその時空の中では、私たち人間が崇める「神」「大いなるもの」「絶対的なもの」「大宇宙」「大生命体」ですら、本当はちっぽけなものなのではないかと考えさせられるのである。

シウダーボリバルを歩いてベネズエラの豊かさを実感

壮大な景観のギアナ高地

 カナイマの拠点となるのは、ベネズエラのシウダーボリバルという川沿いの町である。ここは、かつてスペイン支配から南米独立を勝ち取った英雄、シモン・ボリバルが、この地に軍隊を置いて臨時の首都とした場所だ。町はコロニアル形式の建物が立ち並び、道は丸い大きな石畳で覆われている。

 この町を歩くと、ベネズエラという国の豊かさを実感させられる。商店は物であふれ、昼間の路地は隙間なく衣服やCD、食べ物屋などの露店が連なり、賑わいを見せている。

 しかし、午後7時前後の日没を過ぎると、全ての店のシャッターは下ろされ、露店は跡形もなくどこかへと消え去り、人通りはまったくなくなる。酒場の営業時間は午後1時から7時。それ以降は、町中の店が閉まるので、喉が渇いてもコカ・コーラ1本買うこともできない。

 カナイマへはシウダーボリバルからアプローチするのが一般的だ。私の予約したセスナはパイロットとその情婦、魚を持った男と、私の4人が搭乗。「シートベルトが短かくて締められない」と訴えたところ、パイロットは「問題ない」と言うと操縦桿を引いて離陸。

 この豪放なパイロットは上空で情婦と愛をささやいたり、手放しで雑誌を読んだりと、実にいい加減である。