南北問題の成果を渇望している文在寅大統領(写真:YONHAP NEWS/アフロ)

(Alex Lee:韓国在住ジャーナリスト)

 中国の習近平国家主席が去る1月26日、文在寅大統領と約40分の電話会談を実施し、「非核化の実現は共同の利益に符合する」と言及した。

 1月28日に日米首脳の電話会談を行われた。米国の新大統領が就任して日米首脳の電話会談が開催された後、1週間以内に米韓首脳の電話会談が実施されるのが通例だ。その電話会談を前に、中国と韓国の首脳が外交安保に関して調整したと見られている。

 青瓦台(大統領府)は「韓国の旧正月連休と中国の春節を控えて、新年の挨拶を行なった」と語り拡大解釈を警戒したが、米大統領選挙終了後の昨2020年11月26日に中韓両国外相が合意した、両国間の戦略的パートナーを越えた協力関係を再確認したと見られる。

バイデン政権を交渉に引き出せるか

 文在寅政府の韓半島平和プロセスや政策に深く関与してきた中国専門家は、26日の中韓首脳の電話会談について、2020年11月、康京和(カン・ギョンファ)韓国外交長官と王毅中国外交部長が出した10項目の合意を文在寅大統領と習近平主席が再確認し、合わせて安保問題が議論された可能性が高いと指摘した。

 さらに、この中国専門家は「大統領就任後、文在寅大統領が力点を置いてきた韓半島平和プロセスを2段階で導いていくという構想の下、バイデン大統領との電話会談を前に、韓中首脳が多国間の段階別推進戦略を準備したと見られる」と説明した。

 2020年11月26日、王毅中国外相と康京和韓国外相は以下の10項目で合意した。経済分野については、(1)一帯一路(One belt, One Road)、(2)韓中日自由貿易協定(FTA)、(3)東アジア地域包括的経済協定(RCEP)発効促進と多国間自由貿易の保護、開放型世界経済の建設促進における協力、(4)韓中関係未来発展委員会の設置──と経済協力が主で、東アジアの経済協力を鼓舞する側面が大きい。

 一方、外交安保分野は(5)北東アジアにおける感染病防疫協力体制の構築、(6)韓中2+2(外交+国防)対話の開始、(7)韓半島平和安定のための外交安保的協力、(8)第9回韓中日首脳会談など、米国と緊密な安全保障同盟を結んでいる日本が緊張感を持って見守る問題だ。ほかに(9)今後2年間の韓中文化交流、(10)北京と平昌の冬季五輪協力といった文化交流が含まれている。

 韓国の外交安保専門家は、北朝鮮が年初に行なった第8回党大会などから、北朝鮮はバイデン新政権下で米国と国際社会の対北朝鮮制裁が緩和される兆しはないと判断し、経済的耐久力を高めて核防衛力を増強させる目標を確定したと分析する。

 また、中国も北朝鮮の非核化を強く望んでおり、文在寅大統領が対北朝鮮強硬論を示唆してきたバイデン政権をどのように交渉テーブルに引き出すかに注目していると語る。