バイデン政権は北朝鮮の核開発問題を進展させることができるだろうか(写真:AP/アフロ)

(金 自由:脱北韓国人ライター)

 米国の大統領選挙が終わって、ジョー・バイデン氏が第46代米合衆国大統領に就任した。それに合わせて、多くの国がバイデン時代に向けて外交政策を修正・補完している。中でも韓国と北朝鮮は、米国の政権交代に最も敏感にならざるを得ない。

 バイデン政権が発足して、韓国の保守派の国民はひとまず「韓米同盟」に安堵した。文在寅政権にではない。トランプ前大統領は任期中に在韓米軍削減を公然と口にしたが、バイデン氏は同盟国との関係を重視する、米国の歴代政権と軌を一にする伝統的な価値観だ。

「韓米同盟」は韓国に有利というだけではない。韓米同盟の強化は、韓国の左派政権と追従勢力には決して喜ばしくないだろうが、米軍の韓国駐留は北朝鮮はもちろん、米国の最大の脅威になりうる中国を牽制する点で、金額に換算できない価値を持っている。

 1年と少しの任期を残す文在寅大統領は再び北朝鮮と米国の「仲裁者の役割」を云々し、韓国、米国、北朝鮮のイベント性がある会談を推進するかもしれない。今、韓国には長期執権を狙う左派がいて、大衆迎合とイベントに弱い多数の国民がいる。野党に甘んじている「保守」は理念を喪失し、右往左往しながら分裂に忙しい。

 韓国を正しく導いていくリーダーの不在は、筆者に韓国の未来に不吉な予感を与える。  

 北朝鮮がいかに挑発をしようが、どのような暴言を吐こうが文在寅大統領は自分の任期が終わるまで、北朝鮮の代弁者の役割に忠実だ。康京和外交部長官の後任に、鄭義溶(チョン・ ウィヨン)氏という問題の人物を内定したことを見ても分かる。

 鄭義溶氏はトランプ前大統領に北朝鮮が非核化の意志があるという嘘の情報を提供して、トランプ・金正恩板門店会談を引き出した張本人だ。第2の金正恩代弁者である。 このような人物が外交部長官になれば、外交政策がどの方向に進むのかは明白だ。鄭義溶氏がトップを務める外交部は、恐らく朝鮮民主主義人民共和国外交部のソウル支部レベルに転落するだろう。

 しかし、トランプ前大統領と違って、ショーがあまり好きではないバイデン大統領は文在寅大統領や鄭義溶氏が提案するイベント出演を受諾しない可能性が高い。オバマ政権の時のような6カ国協議を再開する方向に重点を置くのではないだろうか。