二階俊博自民党幹事長。東京五輪について「党として開催促進の決議をしてもいいくらいだ」との発言が大きく報じられた。2019年2月撮影(写真:YUTAKA/アフロ)

 明らかに絶望感が漂いつつある。今夏に延期となった東京五輪・パラリンピックの開催についてだ。

 新型コロナウイルスの感染拡大が深刻化し、首都圏1都3県への緊急事態宣言も1月7日に発令されることになった。しかし遅きに失した感は否めず、変異ウイルスも含めた第3波の猛威に歯止めをかけられるかどうか、多くの専門家も疑問符が投げかけている。普通に考えても、僅か半年後に開幕が迫っている東京五輪に、今回の発令宣言がさまざまな面で致命的大打撃を与える流れは避けられまい。

ワクチン接種も五輪開催の追い風にならない

 期待されているワクチン接種も東京五輪の開催に関しては、ほとんど追い風となりそうもない。仮にワクチン接種の効果が現れようとも、さすがに東京五輪開幕を迎える今夏までにパンデミック(世界的流行)を完全に封じ込めることは夢物語だからだ。しかも南アフリカで確認されている別の変異種には開発されたワクチンの有効性を疑問視する声が相次いでいる。これらの情報は大会運営上の安全確保に役立てるためいち早く世界情勢をリサーチしている東京五輪・パラリンピック競技大会組織委員会にも暗い影を落とし始めている。

 逆風にもめげず組織委は幹部を中心に、つい最近まで複数国で開発と承認が迅速に進められているワクチンに一縷の望みを託していた。コロナ禍にもかかわらず大手広告代理店と連動しながら主要メディアに対して東京五輪開催のポジティブな情報を小出しにしながら流して“印象操作”を図っていたのも、大会開催への強気な姿勢の表れだった。

 しかしながら大会の追加経費費用が2940億円に膨れ上がる見通しとなった昨年12月4日以降、組織委は世間からさらなる猛烈なバッシングにさいなまれるようになり、その中では「ノイローゼ気味になる要職の関係者もいるほど」(組織委関係者)だという。どうやらこの年末年始を境にして我に返った多くの組織委関係者が「実は新型コロナウイルスのワクチンが東京五輪開催の“救世主”になりえない」という現実をいよいよ直視し始め、落胆の色を隠せなくなっているようだ。