菅首相と会談した中国の王毅外交部長(写真:代表撮影/ロイター/アフロ)

 王毅・中国国務委員兼外交部長(外相)は11月27日に実施された茂木敏充外相との共同記者会見で、(1)日中は尖閣問題を将来に先送りする合意に戻ろう、(2)尖閣に日本の漁船を装う船の接近があった、との発言をした。これに対して、日本の政治家の一部や反中と呼ばれる人を中心に不満が出ている。中国ではこの記者会見は報道されていないようだ。

 尖閣問題については、日本は自国の領土だとしている。2020年に入って中国側の領海侵犯が続いていることが問題視されてきたが、今回の王毅外交部長の発言を聞くと、それは中国側の問題ではなく、日本側の誤解または一部の極右による行動の結果だと言いたいようであった。

 日本は、彼の発言を二つの視点から考えるべきである。一つは日中外交の視点で王毅外相の発言には疑問が残るという点、そして彼の発言の背景にバイデン政権が見え隠れする点だ。

王毅発言の背後にある中国共産党の意図

 中国の外交トップは、共産党の政治局員で中共中央外事活動委員会弁公室長主任の楊潔篪氏である。彼は、外交部長を経て今の地位にある。現在の中国が採る対日融和策は、楊潔篪氏が習近平国家主席の下で推進している政策だ。その下にいる王毅外相のこの発言は、当然、楊潔篪弁公室長の了解の下、中国の意思を表すためのものだったと考えるべきだろう。

 一方、その後の世耕弘成・参議院幹事長をはじめとする同発言への批判については、日本共産党の志位和夫委員長まで批判していることを考えれば、中国が事前に想定できなかったはずはない。

 しかも、日中は習近平国家主席の国賓来日と天皇陛下の国賓訪中を今後のスケジュールに入れている。この発言がどのようなリアクションを起こすかを考えれば、日本の世論を逆なでして二大イベントを壊すつもりもないだろう。つまり、中国側はかなり計算して発言したと考えるべきだ。