衆院厚生労働委員会で答弁する政府の新型コロナウイルス感染症対策分科会の尾身茂会長(2020年11月27日、写真:つのだよしお/アフロ)

(筆坂 秀世:元参議院議員、政治評論家)

 当初より危惧されていたとおり、秋、冬を迎えて新型コロナウイルスの感染拡大が止まらない。連日のように過去最多の感染者が発生している。重症者は7日連続で最多を更新している。残念だが、まだ増え続けるだろう。

 多くの国民が心身ともに疲れ果てている。それでも、ともかく今は耐えるしかない、と思って懸命に生きている。COPD(慢性閉塞性肺疾患)という基礎疾患を抱えている私は、この間、雑誌の対談や講演、YouTubeなどへの出演をすべてお断りしている。埼玉県川越市に住んでいるが、東京に行ったのは10月に国立がんセンターに検査に行った一度だけである。こういう人は私だけではないと思う。もっと大変な方々も、多いはずだ。

何のメッセージも出せない菅首相

 だが菅政権からは、コロナ対策への懸命さや危機感がまったく伝わってこない。そもそもほとんど記者会見もしておらず、やっても一方的にメモを読み上げるだけである。

 11月26日、「国民の皆さんには、ぜひともマスク着用、手洗い、3密の回避という基本的な対策に協力いただきたい。一緒になって感染拡大を何としても乗り越えていきたい」と呼びかけたが、目新しいことは何もない。今さら聞かずとも分かっていることだけという空疎なものだった。記者の「なぜGo Toトラベルだけ触れないのか。理由を教えてくれませんか」という問いかけを無視して、逃げるように立ち去った。これでは国民に何も伝わらない。