2019年3月、オープン戦でリリーフ登板したシカゴ・カブス時代の田澤純一投手(写真:アフロ)

 これは「波乱」と言うべきなのか。プロ野球のドラフト会議でBC(ベースボール・チャレンジ)リーグ・埼玉ヒートベアーズの田澤純一投手がどの球団からも指名されなかった。

 支配下、育成ともに最後まで名前は呼ばれず、あらかじめドラフトで指名されることを想定して会見場を設けた上に有料でファンの集いまで実施した球団側は結果として“赤っ恥”をかく格好となってしまった。別室で待機していた田澤本人は何の対応もしないまま終わってしまったのだから、シラケた雰囲気が漂ったのも当たり前である。

BCリーグで結果出せなかった右腕

 かつて田澤は日本の社会人野球からMLB(メジャーリーグ)入りを宣言し、NPB(日本野球機構)のセ・パ両リーグ球団に自身をドラフトで指名しないように文書を送り付け、レッドソックスと2008年に3年契約を締結。2013年には勝利の方程式の一角を担い、セットアッパーとしてチームをワールドチャンピオンへと導いた。しかしマイアミ・マーリンズへ移籍した2017年シーズン以降は安定した成績を残せなくなってチームを転々。今年3月にマイナー契約を結んでいたシンシナティ・レッズを解雇され、同年7月から日本のヒートベアーズへ入団していた。

 2008年の一件によって日本プロ野球関係者を激怒させ、その当時から設けられ、自らのNPB球団入りの障壁となっていた通称「田澤ルール」も今年9月に全面撤廃。今年のドラフトで指名されれば、空白期間を経ずに来季から12球団でのプレーが可能になるはずだった。経験豊富な元世界一右腕には即戦力として複数の球団が下位ながらも指名を検討しているとみられていたが、いざフタを開けてみると全球団のリストから除外されていた。

 BCリーグでの成績は16試合に出場し、通算16イニングを投げ、2勝0敗、自責点7、防御率3.94、被安打率7.88。特に防御率と被安打率に関してはMLBから日本のボールやマウンドに順応するまで多少時間を要していたとしても、大目に見られるような数値ではない。日本プロ野球を目指すセミプロ選手たちが集まる独立リーグで、この程度の数字しか残せないようでは各球団がドラフトの貴重な枠を使ってまで獲得するレベルにないことは明らかだろう。