9月2日、テニスの全米オープン女子シングルス2回戦で、イタリアのC・ジョルジを破り、5年連続の3回戦進出を決めた大坂なおみ(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

 何かと物議を醸しているようだ。女子テニス世界ランク9位の大坂なおみの抗議行動についてである。

 そもそもの発端は先月23日にウィスコンシン州で起きた警官による黒人男性銃撃事件に抗議するため、自身も出場することになっていた「ウエスタン・アンド・サザンオープン」の準決勝(当初は8月27日開催予定)に大会主催者側のWTA(女子テニス協会)へ事前連絡を入れた上で一度は棄権する意思を表明したことだった。結局、その抗議行動に賛同し、同27日の試合開催をすべて1日延期することを決めた大会主催者側と協議した上で棄権を撤回。大坂は同28日に延期された準決勝に臨み、勝利したものの試合中に左太ももの裏を痛め、決勝戦を辞退している。

 こうした一連の経緯に賛否両論はあるにせよ、どちらかというと大坂の母国である日本では理解を示す声は多いようには感じられない。実際、ネット上において大坂の抗議行動に対して困惑し「政治的メッセージはやめたほうがいいのではないか」などと疑問を投げかけるコメントも数多く見受けられる。一部からはかなり厳しいトーンで批判的な言葉も向けられているようだ。

“抗議”に冷淡な日本人、それでも信念を貫く大坂

 それでも大坂は今も自分の信念を貫き続けている。

 米ニューヨークのハードコートで無観客試合として行われている4大大会「全米オープン」の女子シングルス2回戦(現地時間2日)に臨み、世界74位のカミラ・ジョルジ(イタリア)を6-1、6-2のストレートで下し、5年連続の3回戦進出。

 この試合で大坂は「ELIJAH MCCLAIN(エリジャ・マクレーン)」の文字が刻まれた特製マスクを着用してコートに現れた。昨年8月、コロラド州オーロラで買い物から帰宅途中、ぜんそく持ちのためマスクを着用していた姿を不審に思った警官から首を絞めつけられながら地面に押さえつけられ、数日後に死亡した黒人男性の名前だ。

 ちなみに大坂は同大会の1回戦でも「BREONNA TAYLOR(ブレオナ・テイラー)」の名前が入った特製マスクを着用し、コート入りしている。ブレオナ・テイラーさんとは、今年3月に米ケンタッキー州の自宅で就寝中、薬物事件捜査のためノックをせずに玄関を破って突入してきた警官に驚いて侵入者と勘違いした交際相手の男性が発砲し、銃撃戦となった末に流れ弾を複数浴びて死亡した黒人女性である。