『アフリカ経済の真実―資源開発と紛争の論理』を上梓した千葉商科大学人間社会学部の吉田敦准教授

 10億人の人口と豊富な資源を抱えるアフリカ大陸。多国籍企業が市場開拓や資源開発に積極的に投資しているように、世界の成長が鈍化する中、「最後のフロンティア」として大きな期待を集めてきた。もっとも、経済が安定せず、人々の生活は貧しいまま。政情が不安定化している国も少なくなく、テロやクーデター、紛争によって多くの難民が生み出されている。

 本書『アフリカ経済の真実―資源開発と紛争の論理』では、アフリカ経済をマクロに分析するだけでなく、サヘル地域におけるイスラム急進派のテロや麻薬取引、マダガスカルの乱開発、アルジェリアの「資源の呪い」、コンゴの「紛争ダイヤモンド」など、ミクロの事象を通してアフリカの影の部分をフィールドワークで得た実感や現地の声とともに描き出している。本書を上梓した千葉商科大学人間社会学部の吉田敦准教授に話を聞いた。(聞き手:長野光・シードプランニング研究員)

「希望の大陸」アフリカの影の部分

──過去10年ほど、日本を含めた世界の先進国が次々とアフリカに投資し、アフリカは「最後の大きな市場」と期待を集めてきました。ただ、背後には我々が知らないアフリカの苦悩と混迷があります。本書の執筆動機と内容を教えてください。

吉田敦准教授(以下、吉田):本書のはじめにアフリカを「沈みゆく大陸」だと書きました。この「沈みゆく大陸」には、アフリカ経済の「希望に満ちた大陸」といわれる光の部分ではなく、「影の部分」を描き出したかったという意図があります。

 アフリカが「希望に満ちた大陸」といわれた背景には、2001年から2008年にかけての高い経済成長率があります。現に、同期間の世界の経済成長率が平均4.3%に対して、アフリカ全体の平均は5.5%でした。

 2000年代初頭から2009年のリーマンショックあたりまで、資源価格や石油天然ガスの価格が高騰し、国際機関や経済誌『エコノミスト』などの雑誌では、アフリカは資源にあふれ、今後成長する大陸であり、これから多くのビジネスチャンスがある──といった論調の特集が組まれるようになりました。

 たしかにマクロ経済的には、資源輸出やある一定の資源国の経済パフォーマンスが良くなったことは事実です。貿易額をみても、サハラ以南アフリカの輸出額は821億ドル(2000年)から1651億ドル(2016年)、輸入額は662億ドル(2000年)から2166億ドル(2016年)と3倍以上になりました。アフリカへの直接投資の流入額も81億ドル(2000年)から600億ドル近く(2016年)に増加しています。

 この本では、アフリカの中でもこれまで日本ではあまり描かれてこなかった、アルジェリアやマダガスカル、コンゴ民主共和国という国を取り上げました。いずれの国も資源が非常に豊富であり、それゆえに外国企業が積極的に投資しています。

 しかし国の経済は安定していない、人々の生活は豊かにならず貧しい、紛争やテロ、大きな政変が起きてしまっている。これはその他のアフリカ諸国にも共通する課題です。語られざるアフリカの現実の姿である「影の部分」を、日本の一般の読者の方々にも広く知ってもらいたいという思いがあります。