(英国・ロンドンのウェストミンスター宮殿/Pixabay)

(倉山 満:憲政史研究者)

 あなたの理想の教科書って何ですか?

 おそらく質問者は、「これが正解だ!」という、1つの答えを求めているのだと思います。たとえば「日本に誇りを持てる教育を」「グローバル化の時代に世界で戦える人材を育てられる教科書を」「歴史の真実、本当の事を伝えてほしい」等々。

 私は、これらすべて正解であり、不正解でもあるとも思っています。なぜなら、歴史教育には段階があると思っているからです。

 現在の歴史教育を受けていると、大半の人は「年号とか用語とかいっぱい出てきてよくわからないけど、なんとなく日本って悪い国だったんでしょう?」と思って大人になるでしょう。いわゆる自虐教育です。しかも真面目な生徒に限って勉強すればするほど「昔の日本は悪い国だったんだ」と憤る。

 だったら、この逆をやればよい訳です。

 目的は、大半の子供が「日本って、いい国だったんでしょ?」と思えれば、歴史教育として成功だと思います。

 ほとんどの人にとって、歴史を職業にするわけではありません。知らなくても生きていけます。だからこそ、「これくらいは知っておこう」という最低限の内容は義務教育を終えるまでに教える必要があるでしょう。また、入り口ではまず、「日本に誇りを持てる教育」をやればよいのです。

 その中で、「もっと歴史を学びたい」という生徒が出てきたら、違う教え方をすべきです。いつまででも「日本ってすごい国だ」とか言えないと、世界で戦えませんし、真実にもたどりつけません。なぜなら、どこの国の人も「自分の国は凄い」と思っているのですから。