航空自衛隊の地対空誘導ミサイル「PAC-3」(航空自衛隊のサイトより)

 自民党は7月31日、国防部会などの合同会議で、ミサイル防衛に関する提言案を了承した。

「イージス・アショア」ミサイル迎撃システム(以下「陸上イージス」)の山口、秋田両県への配備断念(6月24日国家安全保障会議決定)を受け、今後のミサイル防衛のあり方を与党として提言するものである。

 そもそも迎撃ミサイルのブースター落下による被害(あるかどうかも不明)を懸念するあまり、もし核弾頭であれば数十万人の被害が予想される弾道ミサイルを迎撃する陸上イージスの導入を中止すること自体、前代未聞である。

 なぜ陸上イージスが必要なのか。先日公表された防衛白書(令和2年度)には次のように書かれている。

「北朝鮮は(略)核兵器の小型化・弾頭化を実現しているとみられるとともに、わが国全域を射程に収める弾道ミサイルを数百発保有・実戦配備している」(257頁)

「わが国の安全に対する重大かつ差し迫った脅威となっている中、平素からわが国を常時・持続的に防護できるよう弾道ミサイル防衛能力の抜本的な向上を図る必要があることから(略)イージス・アショア2基を導入が決定された」(260頁)

 白書公表以降、北朝鮮にミサイル削減などの動きは全くない。であれば政府の脅威認識と対応の考え方は変わっていないはずである。

 この深刻な状況下で陸上イージス配備が断念されたため、早急に代替機能を確保する必要がある。

 提言は「総合ミサイル防空能力の強化」「抑止力向上のための新たな取組」「関連施策の推進」の3項目からなっている。

 1番目の「総合ミサイル防空能力の強化」については、①イージス・アショア代替機能の確保(常時持続的な防衛が可能)②経空脅威の増大・多様化への対応(極超音速兵器、無人機スウオーム飛行等、経空脅威の増大・多様化に対応)が挙げられている。