7月1日、国家安全維持法に対する抗議活動を行う香港の人々。「香港独立」と書かれた旗を持っている人も見えるが、この日、その旗を所持していた容疑で逮捕された人もいた(写真:ロイター/アフロ)

 7月1日、香港に国家安全維持法が敷かれたことで、混乱が広がっている。本来なら、この日は香港返還23周年の記念日だったが、今年の記念日は特別な日となった。デモの逮捕者は約370人に上り、早くも香港国家安全維持法違反で逮捕された香港人が10人も出たからだ。

 私はこの日、6人の香港人の知人に、この新法について話を聞いた。以下、賛否とその理由を列挙してみる。

「香港はついに『死』を迎えた」

<40代男性・IT企業経営者 反対>
「1997年7月1日にイギリスから中国に返還された時、香港は『死』を迎える予定だったが、『一国二制度』によって、50年の『延命』を与えられた。だが2020年7月1日、ついに『死』を迎えた。これまでは法律による支配の時代だったが、これからは恐怖による支配の時代になるだろう。
 私はもはや、このような香港は耐えられないので、来年までにシンガポールかマレーシアへ移民しようと考えている。移民先として、台湾は考えない。なぜなら、いつ習近平政権によって『第二の香港』にされてしまうか知れないからだ」

<50代男性・電器関連企業経営者 反対>
「私は広東省に工場を持っているが、米中貿易摩擦とコロナ禍で、大変な逆境のさなかにある。そこへ来て、香港国家安全維持法が施行されたことで、三重苦となった格好だ。オーストラリアやインドに続き、欧米でも中国製品のボイコット運動が起こるかもしれないからだ。少なくとも輸出が減ることになるだろう。
 香港人は賢いので、こんな法律など作る必要はなく、適当に警備を強めたり弱めたりしておけば、デモを起こす人たちも減っていくのだ。だが今回、香港国家安全維持法を定めたことで、香港経済は委縮し、富裕層は逃げ、ますます悪化していくだろう。その意味でも『悪法』だ」