今季からレイズに加わった筒香嘉智選手。写真は3月12日、フィリーズとのオープン戦に出場したときのもの(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

 このまま果てしなき「マネー・ウォー」の争いの末、史上初のシーズン中止となってしまうのか。米メジャーリーグ機構(MLB)は今季開催を巡り、選手会との対立が深刻化している。

 新型コロナウイルスの感染拡大によって開幕を迎えられず、5月中旬から始まった双方の協議は年俸の扱いを巡って着地点が見出せていない。選手会側が「89試合制で年俸完全日割り」などの案を要求したのに対し、MLB側は3度目の最終案として「7月14日開幕の72試合制で年俸日割り70%保証、ポストシーズンが実施された場合は80%保証」と提示。両者の隔たりは大きく、怒りを爆発させた選手会側は交渉打ち切りを宣言するなど事態は泥沼化の様相を呈している。

 そうかと思えば17日になって、MLBのロブ・マンフレッドコミッショナーが前日に極秘裏で再び選手会側と交渉を再開し、開幕に向けて前進しているとの声明を発表。MLBネットワークの記者がTwitterで「合意は近い」とし、また別のニュースソースからは「MLB側が4度目の提案として7月19日、もしくは20日開幕、70日間で60試合実施、年俸は日割り100%、拡大プレーオフを今季と来季に実施などを盛り込んだ条件を提示した」と報じられたが、即座に選手会側によって「合意報道は誤り」と否定されてしまった。相変わらず混迷化に歯止めがかかっていない。

MLBと選手会、折り合わず

 マンフレッドコミッショナーは合意に至らなければ、コミッショナー権限を駆使して強行開催の権利行使に踏み切ると表明している。

 その場合は3月に両者が合意した試合数に比例した年俸で50試合程度の開催を検討しているとみられ、建前上では選手会側が要望する「年俸完全日割り=100%日割り保証」は一応盛り込まれることになるが、もともとのレギュラーシーズン162試合から僅か30%強の試合数にまで削減されるため、結局は報酬自体も約30%程度にまで抑えられてしまう。それもあって選手会側はボイコットも辞さない構えをみせているようだ。

 しかも、この問題はとにかく複雑化している。ロブ・マンフレッドコミッショナーが今月10日の時点でシーズン開催について「100%」と明言していたにもかかわらず、5日後のテレビ出演では舌の根も乾かないうちに「本当にリスクがあると思う」と一転して中止の可能性を示唆。これにも選手会側は「中止をチラつかせる脅迫行為」などとして激しく非難している。

 未曽有のコロナショックは収束の糸口が見えず、米ミネソタ州で黒人市民が白人警察官に殺害された事件に端を発して全米各地での人種差別抗議デモも一層の激しさを増している。社会不安が漂う中、MLBと選手会の双方が「マネー」を巡って感情的な罵り合いを繰り返しているのだから、米国内のファンや主要メディアもうんざりしつつあるのは言うまでもない。